「傷口を高く上げれば血は止まる」——それだけでは、足りないことがあります
いざというときの行動知識
「傷口を高く上げれば血は止まる」——それだけでは、足りないことがあります
いざというときの行動知識
この記事は、本質の防災4STEPの「STEP4|行動を決める」で心構えを整えたあと、実際の応急手当の基本を扱う記事です。応急手当の基本、やけどの手当、胸骨圧迫、骨折・ねんざの見極め、子どもの誤飲、窒息の防止と対応に続く、いざというときの行動知識ゾーンの7本目として、出血の応急処置について整理していきます。
「とにかく傷口を高く上げておけば大丈夫」——そう思って、圧迫を後回しにしてしまったことはありませんか。
出血の応急手当は、何よりもまず圧迫することが基本とされています。今日は、直接圧迫止血法の基本と、大量出血の場合に知っておきたいことを確認していきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事は、出血の手当を家庭だけで完結できるようになるためのものではありません。「まず何をすべきか」という基本の考え方と、緊急性を見極める目安を知っておくことが目標です。子どもの鼻血の対処法もあわせて紹介します。
まずは、圧迫と、傷口を高く上げることの、正しい優先順位から確認していきましょう。
この記事でわかること
- 出血したとき、最初にすべきこと
- 圧迫と、傷口を高く上げることの、正しい優先順位
- 感染を防ぐために気をつけたいこと
- 止血帯を使うべき場面と、使うべきでない場面
- 子どもの鼻血の、正しい止め方
- 「とにかく高く上げる」という対応が、今も信じられている理由
「血が出たら、とにかく傷口を高く上げておけばいいの?」
実は、高く上げることよりも先に、やるべきことがあるんです。
それより先に確認しなければいけないことがあります。まずはそこから見ていきましょう。
「とにかく高く上げる」——とっさにそうしてしまったことはありませんか
転んで擦りむいた、包丁で指を切った——そんなとき、とっさに傷口を高く上げた経験がある方は、少なくないのではないでしょうか。
ただ、高く上げるだけでは、出血を十分に抑えられないことがあるとされています。それよりも先に、圧迫することが基本です。
何よりもまず圧迫することを、一緒に確認していきましょう。
高く上げるより先に、圧迫することを伝え続けてきた
長年の消防活動や応急手当講習の中で、出血の手当について、繰り返し伝えてきたことがあります。
それは、出血に気づいたら、清潔な布やガーゼで傷口を直接しっかりと圧迫することが何よりも基本だということです。同時に、素手で血液に直接触れないよう、ビニール手袋やビニール袋などで手を覆うことも、忘れずに伝えてきました。
傷口を高く上げることも意味がないわけではありませんが、まず優先すべきは圧迫です。順番を間違えると、出血が長引いてしまうことがあります。応急手当講習では、いつもそう伝えるようにしてきました。
また、子どもの鼻血についても、保護者の方からよくご相談を受けてきました。上を向かせたり、仰向けに寝かせたりすると、血液がのどの奥に流れ込んでしまい、気分が悪くなったり、誤って気管に入ってしまったりするおそれがあります。そのままの姿勢で、上を向かせないことを、繰り返しお伝えしてきました。
止血帯についても、安易に使わないよう伝えてきました。神経や組織を傷つけてしまう可能性があるためです。ただし、目の前で四肢が大きく損傷しているなど、命に関わるとひと目でわかるほどの大量出血の場合は、出血している場所より心臓に近い側(中枢側)を圧迫する必要があります。この判断は、現場で強く意識してきたことのひとつです。
ここから、直接圧迫止血法の基本、感染防止の考え方、そして大量出血の場合の対応を確認し、最後に、こうした対応が誤解されやすい理由と、子どもの鼻血の対処法にも軽く触れていきます。
1つ目|出血に気づいたら、まず清潔な布で直接圧迫してください
日本赤十字社によると、出血しているきず口をガーゼやハンカチなどで直接強く押さえて、しばらく圧迫することが止血の基本とされています。多くの出血は、この方法で対応できるとされています。
消防庁の資料でも、きれいなハンカチやガーゼでしっかりと押さえ、片手で効果が乏しい場合は両手で体重を乗せながら圧迫することがすすめられています。圧迫しても血が止まりにくいときは、圧迫している位置が出血部位からずれていたり、力が弱かったりすることが考えられるとされています。
- 清潔な布・ガーゼ・ハンカチなどを傷口に当てる
- 手のひらでしっかりと圧迫する(片手で効果が乏しければ両手で体重をかける)
- 圧迫したまま、血が止まるまで続ける
傷口を高く上げることも、まったく意味がないわけではありませんが、現在の公的な資料では、圧迫ほど明確には位置づけられていません。まずは圧迫を最優先に考えることが大切です。
2つ目|圧迫する前に、できる範囲で感染防止を
こども家庭庁の資料によると、傷の手当でまず大事なのは止血ですが、可能であれば水で傷を洗うことも感染防止につながるとされています。傷口の深さと大きさを確認し、ガーゼを当てて止血することがすすめられています。
日本赤十字社や消防庁の資料では、救助する側もビニール手袋やビニール袋、ゴム手袋などで手を覆い、感染予防に努めることがすすめられています。とっさのときは、身近にあるビニール袋などで代用してもよいとされています。
血液には、目に見えない感染症のリスクが伴うことがあります。素手で直接触れることを避ける習慣を、家族の中でも共有しておくと安心です。
3つ目|命に関わる大量出血は、ためらわず止血帯・119番通報を
消防庁の止血に関する教育テキストによると、止血帯は、直接圧迫止血法や、出血部位より心臓に近い側の血管を指で押さえる方法では止血が困難で、出血によって生命の危機が切迫している四肢の出血(轢断など)の場合に限って使用するとされています。装着する位置は出血部位から5〜8cmほど心臓に近い側(中枢側)が目安とされ、脇の下や太もものつけ根、首には使用できないとされています。
日本赤十字社によると、止血帯は神経などを痛める危険性があるため、安全かつ適切に実施できるよう、手当について十分習熟しておくことが必要だとされています。
- 出血している場所より心臓に近い側(中枢側)を、ためらわずしっかりと圧迫してください
- 止血帯になるもの(三角巾や布など)があれば使用し、同時に、迷わず119番へ通報してください
- それ以外の通常の出血では、まず直接圧迫を優先し、安易に止血帯を使うことは控えてください
止血帯は、誰にでも常に必要な手当ではありません。目の前の出血が命に関わるとひと目でわかるほどの状況に限られる、特別な対応だと考えてください。
4つ目|昔ながらの対応は、今も根強く残りやすい
「出血したら、とにかく傷口を高く上げる」という対応は、昔ながらの知恵として今も根強く残っているといわれています。心理学者のStephan Lewandowsky氏らが2012年にまとめた分析(Psychological Science in the Public Interest誌)では、一度信じた情報は、後から誤りだとわかっても訂正されにくく、記憶に残り続ける傾向があるとされています。
子どもの鼻血についても、同じようなことが起きやすいとされています。広島県医師会の資料によると、「ティッシュを詰めて、上を向いて、後ろの頭をトントン叩く」という対処法は今も広く行われていますが、上を向くと血液がのどの奥に流れ込み、気分が悪くなったり誤って気管に入ってしまったりするおそれがあるとされています。正しくは、座った姿勢のまま前かがみになり、鼻をしっかりとつまんで5分ほど圧迫を続けることがすすめられています。
古い知識を持っていたこと自体を気にする必要はありません。大切なのは、「高く上げる」を「まず圧迫する」に、「上を向く」を「前かがみでつまむ」にアップデートすることです。
この記事で参考にした情報
本文中で紹介した内容は、以下の公的機関・研究にもとづいています。最新の内容は、各リンク先で随時更新されています。
- 日本赤十字社多量の出血|講習の内容について 記事を見る ›
- 消防庁直接圧迫止血法 記事を見る ›
- 消防庁テロ災害等の対応力向上としての止血に関する教育テキスト(指導者用・PDF) 記事を見る ›
- こども家庭庁もしもの時の「応急手当方法」|こどもの安全ハンドブック 記事を見る ›
- 広島県医師会子どもサポーターズ|鼻血が出たとき 記事を見る ›
- 学術研究(参考)Lewandowsky et al. (2012) Misinformation and Its Correction 論文を見る ›
実際の応急手当の手技や搬送の判断は、消防署や日本赤十字社の救命講習・かかりつけの医療機関でも確認しておくと安心です。
血を見ると、誰でも慌ててしまうものです。だからこそ、まず圧迫することだけを覚えておいてほしいと思っています。
高く上げることは、圧迫のあとに余裕があれば。命に関わる大量出血は、ためらわず止血帯と119番を。それだけで、とっさの判断がぐっとしやすくなります。
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に覚え直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
清潔なガーゼや布、ビニール手袋を、救急箱や車の中などすぐ手に取れる場所にまとめておく
三角巾や長めの布など、止血帯として使えそうなものの置き場所を、家族で確認しておく
子どもの鼻血が出たときの正しい対処法(前かがみで、しっかりつまむ)を、家族で一度確認しておく
まずは今日、ひとつ確認してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
そうなんです。順番を間違えると、出血が長引いてしまうことがあります。「高く上げる」ではなく「まず圧迫する」——その順番を、ぜひ覚えておいてください。
出血の応急処置 よくある質問
出血したら、まず何をすればいいですか?
清潔な布やガーゼで、傷口を直接しっかりと圧迫してください。多くの出血は、この方法で対応できるとされています。
傷口を高く上げる必要はないのですか?
高く上げること自体に意味がないわけではありませんが、現在の公的な資料では圧迫ほど明確には位置づけられていません。まずは圧迫を優先することがすすめられています。
素手で圧迫してしまった場合はどうすればいいですか?
できるだけ早く、石けんと流水でしっかり手を洗ってください。相手の血液に触れたことが気になる場合は、医療機関に相談することもすすめられています。
止血帯はいつ使えばいいですか?
直接圧迫では止まらないほどの、命に関わる大量出血の場合に限られるとされています。神経を痛める危険性もあるため、安易に使うことは控え、正しい使い方は救命講習などで確認しておくと安心です。
子どもの鼻血はどう対処すればいいですか?
上を向かせたり、仰向けに寝かせたりせず、座った姿勢のまま前かがみになり、鼻をしっかりとつまんで5分ほど圧迫を続けることがすすめられています。
この記事のポイント
- 出血したときは、清潔な布での直接圧迫が基本とされている。
- 圧迫の際は、ビニール手袋等での感染防止も忘れずに。
- 傷口を高く上げることは補助的で、圧迫が優先とされている。
- 命に関わる大量出血は、ためらわず止血帯・119番通報が必要になることがある。
- 子どもの鼻血は、上を向かせず前かがみでつまむことがすすめられている。
まとめ
出血の手当は、何よりもまず圧迫することが基本とされています。傷口を高く上げることは、圧迫を補う対応であり、それだけに頼るものではないとされています。
命に関わるとひと目でわかるほどの大量出血の場合は、ためらわず止血帯を使い、迷わず119番通報することが必要になることがあります。「とにかく高く上げる」という昔ながらの対応から、「まず圧迫する」という基本にアップデートしておくこと。子どもの鼻血についても、上を向かせず前かがみで対応する——その小さな知識の更新が、いざというときに家族を守る力になっていくのだと感じています。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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