外出先で大きな地震にあった瞬間、まず家に帰ろうとしてしまう心の仕組み
STEP4|行動の設計図
外出先で大きな地震にあった瞬間、まず家に帰ろうとしてしまう心の仕組み
外出先で大きな地震にあった瞬間、多くの人は「まず家に帰らなければ」と感じます。ただ、その気持ちのまま動くことが、かえって家族との再会を遠ざけてしまうことがあると考えられています。
「早く会いたい」という自然な気持ちを、無理な行動ではなく、落ち着いた形で叶える方法を、今日は一緒に見ていきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
外出先で大きな地震にあったとき、多くの方が「まず家に帰らなければ」と感じます。この記事は、その気持ちを否定するものではありません。家族を思う気持ちを大切にしながら、実際にはどう動くことが家族との再会を近づけるのか、行政資料や心理学の知見も交えて一緒に考えていくページです。
まずは、その「帰りたくなる」気持ちの正体から確認していきましょう。
この記事でわかること
- 外出先で地震にあったとき、多くの人が「帰りたくなる」心理の背景
- 一斉に移動を始めることが、思わぬリスクにつながる理由
- 家族との安否確認手段を、電話が使えない前提で複数決めておく方法
- 「帰る」だけに頼らない、家族との合流ルールの決め方
「もし外にいるときに地震がきたら、ぼくすぐお家に帰りたくなっちゃうと思うんだけど」
その気持ち、とてもよくわかります。家族のことが心配になるのは、当たり前のことです。
ただ、実はその「すぐ帰りたい」という気持ちのまま動くことが、かえって家族との再会を遠ざけてしまうことがあるんです。今日は、その理由と、代わりにできることを一緒に整理していきましょう。
家族のもとへ、まず駆けつけたくなる気持ち
通勤中や出先で仕事をしているとき、大きな揺れを感じたら——。頭に浮かぶのは、まず家族の顔ではないでしょうか。子どもは学校で無事だろうか、家にいる家族は大丈夫だろうか。そう考え始めると、いてもたってもいられなくなります。
その気持ちを我慢する必要はありません。ただ、家族のもとへ「早く着く」ことと、「無事に会える」ことは、実は同じではない場合があります。
その違いを先に知っておくことが、いざというときの落ち着いた判断につながると考えられます。
研修や講話の場で感じてきた、「帰りたい」気持ちの強さ
防災士研修や地域の防災講話の場で、参加者の方に「大きな地震が外出先で起きたら、まず何をしますか」とうかがう機会がよくあります。返ってくる答えは、驚くほど似通っています。「とにかく家に帰る」「子どものお迎えに行く」。家族のことが気になって、じっとしていられなくなる、という声を多く耳にしてきました。
それは、家族を大切に思う自然な気持ちの表れだと思います。ただ、防災士研修の場では、その「早く会いたい」という気持ちのまま徒歩や自転車で一斉に移動を始めることが、かえって危険や混乱を招くことがある、という話もあわせて伝えるようにしています。
「家に帰る」ことを急ぐより先に、決めておけることがある——研修の場で、そう気づいていただけることが多くあります。
では、なぜ人はそれほど「帰りたくなる」のでしょうか。ここから、その理由を一緒に確認していきましょう。
1つ目|「家に帰りたい」気持ちの正体
この「早く家族のもとへ」という気持ちには、心理学的な裏づけもあるようです。東北大学災害科学国際研究所の邑本俊亮氏は、総務省が公開している資料の中で、大きな災害が起きたときにすぐ避難しなかった理由として「家族を探しに行ったり、迎えに行ったりしたから」「家族の安否を確認していたから」という声が上位に挙がることを紹介しています。
また、同じ資料では「みんなが逃げないから自分も逃げない」というように、周囲の行動に合わせて自分の判断を決めてしまう心理についても触れられています。「早く帰らなければ」という気持ちは、家族を思う自然な感情であると同時に、多くの人が同じように感じる心理的な傾向でもあるとされています。
気持ちそのものは自然なものだと知っておくだけで、少し落ち着いて次の行動を考えやすくなるのではないでしょうか。
2つ目|一斉帰宅が招く、思わぬリスク
2011年の東日本大震災では、鉄道が止まったことをきっかけに、多くの人が一斉に徒歩で帰宅を始めました。国土交通省の白書によると、当時は首都圏全体で約515万人、東京都内だけでも約352万人が当日中に自宅へ戻れない状況になったとされています。道路にはバスやタクシーを待つ人、徒歩で歩く人があふれ、車の移動速度が徒歩並みになるほどの渋滞が発生しました。
こうした混雑が招く一番の問題は、消防・警察・自衛隊の車両が現場にたどり着けなくなることです。東京都は、人命救助のカギとされる発災から72時間の間、道路の混雑によって救助・救命活動に支障が出ることや、徒歩で移動している最中に余震などで思わぬ被害にあう可能性があることから、「むやみに移動を開始しない」ことを呼びかけています。
この考え方は、東京都帰宅困難者対策条例にも反映されています。内閣府がまとめた条例の概要では、事業者に対して従業員が施設内にとどまれるよう3日分の飲料水・食料等を備蓄する努力義務が定められているほか、都が指定する一時滞在施設の周知、代替交通手段や災害時帰宅支援ステーションの確保といった仕組みが紹介されています。「帰らない」という選択肢を安心して取れるように、社会の側にも備えが用意されているということです。
「帰らない」ことは、あきらめではありません。むしろ、救助を待つ人や、これから合流する家族のためにできる選択のひとつだと考えられます。
3つ目|家族との「安否確認手段」を先に決めておく
その場にとどまると決めても、家族の無事が確認できなければ不安なままです。大きな災害が起きた直後は、安否確認の電話が集中して回線がつながりにくくなることが知られています。東京都のハンドブックでは、電話の輻輳や停電を見込んで、複数の手段を組み合わせて使うことがすすめられています。
具体的には、声で安否を伝え合える「災害用伝言ダイヤル(171)」、携帯電話やインターネットから登録・確認できる「災害用伝言板」、そしてSNSでの発信など、いくつかの選択肢があります。どれか一つに頼るのではなく、「まず171を試す、つながらなければSNSに投稿する」というように、家族で優先順位を決めておくと、いざというときに迷わずにすみます。
手段を1つに絞るより、「順番」を決めておくほうが、実際に使えなかったときの焦りが少なくなるように感じています。
4つ目|「帰る」以外の合流ルールを話し合っておく
安否が確認できたら、次に考えたいのが「いつ、どこで会うか」です。すぐに帰れない状況が続く場合、「無理に移動せず、安全が確認できてから合流する」というルールをあらかじめ決めておくと、その場にとどまる判断がしやすくなります。
以前、電話もLINEも使えない日に、家族と会うための準備について取り上げましたが、集合場所や連絡の優先順位を家族で一度話し合っておくだけで、「帰らなければ」という焦りは大きく減るように感じています。話し合いそのものが、家族にとっての備えになります。
特別な話し合いの時間を設けなくても、次の一歩から少しずつ決めていけば十分です。
防災士研修で「帰りたい気持ちを我慢してください」とだけお伝えすると、みなさん少し困った表情をされます。気持ちを我慢するのは、簡単なことではありません。
でも、「家族と先に合流ルールを決めておく」という話に変えると、表情が変わります。「帰る」以外にも、家族とつながる方法はあると知っているだけで、その場にとどまる決断がしやすくなるのだと感じています。
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に見直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
安否確認の手段(171・伝言板・SNS)に、家族で優先順位をつけてみる
「すぐ帰らない」という選択肢があることを、家族と話しておく
職場や外出先の近くにある一時滞在施設を、一度調べてみる
まずは今日、ひとつ試してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
あなたのご家庭では、外出先で災害にあったときの連絡方法や合流ルールを、家族で話したことがありますか。
特別な準備をしなくても、「まず171を試す」「無理に移動しない」と一言決めておくだけで、いざというときの気持ちの落ち着き方が変わってくると感じています。
外出先の地震と帰宅 よくある質問
会社にいるとき大きな地震が起きたら、すぐに帰った方がいいですか?
建物や周囲の安全が確認できるようであれば、慌てて外に出ず、しばらく施設内にとどまることがすすめられています。発災直後は道路が混雑しやすく、東京都のハンドブックでも「むやみに移動を開始しない」ことが呼びかけられています。
家族と連絡が取れないとき、どうすればいいですか?
電話が集中してつながりにくくなることを見込んで、171(災害用伝言ダイヤル)や災害用伝言板、SNSなど、複数の連絡手段を家族であらかじめ決めておくと安心です。
徒歩で帰る場合、気をつけることはありますか?
徒歩で移動する際は、余震などによる思わぬ被害に注意が必要です。コンビニやガソリンスタンドなど、災害時帰宅支援ステーションの目印がある店舗では、トイレ休憩や道路情報の提供を受けられる場合があります。
会社に泊まることになったら、何を準備しておけばいいですか?
東京都の条例では、事業者に3日分の飲料水・食料等の備蓄が努力義務として求められていますが、職場の備えだけに頼らず、自分の分の水や食料、モバイルバッテリーなどを日頃からかばんに入れておくと、より安心です。
この記事のポイント
- 家族が心配で「帰りたい」と感じるのは、誰にでも起こる自然な気持ち。
- 一斉に移動を始めることは、道路の混雑を招き、救助活動の妨げにつながることがある。
- 家族との安否確認手段は、電話がつながらない前提で複数決めておく。
- 「帰る」以外の合流ルールを話し合っておくことも、家族にとっての備えになる。
まとめ
外出先で大きな地震にあったとき、家族のもとへ急ぎたくなる気持ちは、誰にとっても自然なものです。その気持ちを否定する必要はありません。ただ、一斉に移動を始めることが、かえって家族との再会を遠ざけてしまうことがあるということも、知っておく価値があると思います。
安否確認の手段を決めておくこと、そして「帰る」以外の合流ルールを話し合っておくこと。この2つがあるだけで、「早く会いたい」という気持ちを、無理な行動ではなく、落ち着いた形で叶えやすくなります。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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現場経験や実践例を交えながら、より実践的に学べる設計図を少しずつ育てています。
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