牛乳、卵、マヨネーズ。停電した冷蔵庫で、先に困るのはどれか
STEP3|暮らしを整える
牛乳、卵、マヨネーズ。停電した冷蔵庫で、先に困るのはどれか
本質の防災4STEP
この記事は、本質の防災4STEPの「STEP3|暮らしを整える」の記事です。停電が続くとき、冷蔵庫の中をどう使い切るかの続きとして、食品ひとつずつの見分け方をまとめています。
停電した冷蔵庫の中身は、一斉にだめになるわけではありません。困る順番が、だいたい決まっています。
牛乳はどうか、卵はどうか、開けかけのマヨネーズはどうか。ひとつずつ、公的機関が出している目安に沿って見ていきます。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
冷蔵庫の中身をひとつ残らず救う方法をお伝えするページではありません。「これ、どうしよう」と手が止まったときに、迷わず順番を決められる——そのための目盛りを置いておくことが、このページの目指すところです。
この記事でわかること
- 冷蔵庫の中身を、傷むまでの早さで3つに分ける考え方
- 牛乳・卵・マヨネーズ、それぞれの扱いがどう違うのか
- 「何時間もつか」より「何℃を超えたか」で考えたほうが迷わない理由
- 冷凍庫の食材を、氷の結晶で見分ける方法
- においや見た目で判断してはいけない、その根拠
「牛乳って、停電したらもう飲めないの?」

ふくぼう先生、停電したとき、冷蔵庫の牛乳ってもう飲めなくなっちゃうのかな。卵とかマヨネーズはどうなんだろう?

いいところに気づきましたね。実は、冷蔵庫の中身は一斉にだめになるわけではないんです。牛乳のように早いものもあれば、未開栓のマヨネーズのようにほとんど変わらないものもあります。
その順番を先に知っておくと、停電したときに迷う時間がぐっと短くなります。一緒に見ていきましょう。
冷蔵庫の中は、もともと「早く食べたい順」に並んでいる
今日は何を作ろうか、と冷蔵庫を開けたとき。「お刺身は今日のうち」「豆腐は明日まで」「根菜はまだ平気」——特に意識しなくても、私たちは早く使いたい順に頭の中で並べ替えています。毎日の献立を考える、ごく普通の作業です。
停電したときに必要になるのも、実はその並び順です。新しく覚えることはほとんどありません。いつもの感覚に、公的な目盛りを少しだけ足していきます。
「なんとなく大丈夫そう」が、いちばん危ないところ
小樽市が公開している「停電時に保管していた食品による食中毒を予防しましょう」には、3つのことが書かれています。
- 停電すると、冷蔵庫・冷凍庫内の温度はすぐに上昇する
- 電気が復旧して再び冷やしても、一度増えてしまった食中毒菌は残る
- 食中毒菌が増殖していても、見た目やにおいに変化はない
3つ目が、この記事でいちばんお伝えしたいところです。私たちは食べものが傷んだかどうかを、まず鼻で確かめようとします。けれど公的機関は、そろって「それでは分からない」と書いています。
においで分からないからこそ、順番と温度で決めておく。小樽市も「安全性に不安がある場合は、賞味・消費期限内であっても食べないようにしましょう」としています。
「何時間もつか」より「何℃を超えたか」で考える
停電のとき、いちばん多く検索されているのは「冷蔵庫は何時間もつのか」です。ところが、日本の公的機関が「停電後◯時間」と時間で示した資料は、探した範囲では見当たりませんでした。示されているのは、いつも温度のほうです。
家庭でできる食中毒予防の6つのポイントでは、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下が目安とされています。農林水産省「冷蔵庫のかしこい使い方」は、さらに具体的に冷蔵室は4℃前後、冷凍室は−18℃以下が適温としています。
10℃以下は「ここを超えないでほしい」という線、4℃前後は「ふだんはここ」という目盛りです。
時間の目安として世界的によく使われているのは、米国CDCが公開している資料です。ドアを開けない場合、冷蔵庫は約4時間、冷凍庫はぎっしり詰まっていれば48時間、半分ほどなら24時間。そして4時間を超えた場合、冷蔵庫の中の生鮮食品(肉、魚、切った果物や野菜、卵、牛乳、食べ残し)は廃棄をとしています。
日本の公的資料に同じ形の時間表示は見つけられませんでした。数字の出どころも一緒にお伝えしておきます。
ここで大事なのは、この時間がすべて「ドアを開けなかった場合」の話だということです。1回開けるたびに、この時計は早く進みます。冷たさを保つ工夫はもとの記事にまとめています。
冷蔵庫の中身を、傷むまでの早さで3つに分ける
全部を覚える必要はありません。早い・中くらい・ゆっくりの3つに分けておくだけで、停電した夜に手が止まらなくなります。
| グループ | 主な食品 | 考え方 |
|---|---|---|
| 早い | 牛乳・生クリーム・ひき肉・生の肉と魚・卵・調理済みの残りもの・カットした野菜と果物・豆腐 | 10℃を超えた時間が積み重なるグループ。CDCは停電が4時間を超えた場合、この群の廃棄をすすめています |
| 中くらい | ハム・ソーセージ・ベーコン・チーズ・ヨーグルト・開栓後のマヨネーズやドレッシング | 早くはありませんが、置いておいて平気というわけでもありません。冷たさが残っているうちに使います |
| ゆっくり | 未開栓のマヨネーズ・みそ・しょうゆ・酢・漬物・梅干し・根菜・りんごなどの果物 | もともと常温で置けるもの、塩分や酸で菌が増えにくいもの。停電の後半を支えてくれます |
ひとつだけ、覚えていただきたいのが卵です。「卵は常温でも平気」と思われがちですが、内閣府 食品安全委員会は10℃以下の冷蔵保存を前提に説明しています。CDCも、4時間を超えたときの廃棄対象に卵を挙げています。冷蔵庫に入れていた卵は、ゆっくりではなく早いグループです。
乾物やお米のように、そもそも冷蔵庫に入れないものが家にあると、この表の外側が厚くなります。棚にある乾物の話も、あわせてどうぞ。
牛乳、卵、マヨネーズ。この3つは事情がまるで違う
検索でよく並ぶ3つを、ひとつずつ見ていきます。同じ冷蔵庫の同じ棚にあっても、扱いはまったく別ものです。
一般社団法人 日本乳業協会は「10℃以下で冷蔵保存し、できるだけ早めにお召し上がりください」としています。あわせて、開封すると、記載されている賞味期限は無効になるとも書かれています。開けた牛乳は、停電が始まった時点でいちばん早い側です。
「常温保存可能品(ロングライフ牛乳)」は、開ける前なら常温で置いておけます。棚に1本あると、停電の朝でも子どものココアが作れます。
内閣府 食品安全委員会は、卵を10℃以下で冷蔵保存することを前提に説明しています。そのうえで、賞味期限を過ぎた卵については「サルモネラ属菌対策のため、十分に加熱して(75℃以上、1分以上)、食べることをおすすめします」としています。
庫内の温度が上がったあとの卵は、生食を選ばず加熱して使う。この一つを決めておくだけで、迷いがなくなります。
キユーピーは「未開栓のマヨネーズは常温で、直射日光を避け、なるべく涼しい場所で保存してください」「開栓後は、冷蔵庫で保存してください」「開栓後は、1ヵ月を目安に」としています。0℃以下に置かれると油が分離するため、冷気の当たらないドアポケットがおすすめだそうです。
つまり未開栓なら停電はほとんど関係なく、開栓後は「中くらい」。停電の後半、味つけの主役になってくれます。
冷凍庫は「氷の結晶が残っているか」で見る
冷凍庫は、冷蔵室よりずっとゆっくりです。CDCの資料では、ぎっしり詰まっていれば48時間、半分ほどなら24時間。農林水産省も「凍結した食品を詰め込むことが節電につながります」としていて、詰まっているほうが日常でも得という点は共通しています。
開けたときに氷の結晶が残っていて、まだ冷たいなら、そのまま凍らせ直せるとされています。逆に、完全に解けきってぬるくなっていたものは、別の判断になります。
中心までしっかり火を通します。6つのポイントでは、加熱の目安は中心部75℃で1分以上、温め直しも75℃以上、スープなどは沸騰させるとされています。
ただし「加熱すれば大丈夫」が、いつも成り立つわけではありません。理由はこの下のFIELD MEMOにまとめています。火の確保についてはガスが止まったとき、台所でできることとできないことにまとめています。
冷蔵庫が動き続けていれば、この判断はまるごと要らなくなる
ここまでは、電気がない前提の話でした。もうひとつ、冷蔵庫そのものを動かし続けるという選択肢があります。起動電力の壁や容量の目安は停電が続くとき、冷蔵庫の中をどう使い切るかに詳しく書いていますので、そちらへ譲ります。
そこまでの用意がなくても、できることがひとつあります。冷蔵庫用の温度計を、庫内にひとつ置いておくことです。夏の作り置きやお弁当、買い物から帰ったあとの庫内の戻り具合——ふだんの安心のほうが先に増えます。そして停電したときには、その目盛りがそのまま判断の材料になります。
10℃を超えているか、4℃前後を保てているか。数字が見えるだけで、鼻に頼らずに済みます。停電した夜の明かりと情報については停電した夜でも、情報だけは届く家にしておくにまとめています。
「しっかり加熱すれば大丈夫」は、いつも成り立つわけではない
停電のあとにいちばんよく聞くのが、「火を通せば平気でしょう」という考え方です。もったいないという気持ちもありますし、私自身、長いあいだそう思っていました。ところが調べてみると、そう言い切れない場面があります。
内閣府 食品安全委員会のファクトシートには、黄色ブドウ球菌について「産生されるエンテロトキシンは耐熱性が高く、通常の加熱調理では活性を失いません」と書かれています(ブドウ球菌食中毒・PDF)。セレウス菌の嘔吐毒にいたっては、126℃で90分の加熱でも失活しないとされています(セレウス菌食中毒・PDF)。菌そのものは加熱で減らせても、すでに作られてしまった毒は、火を通しても消えないということです。
同じ資料を読むと、冷蔵庫の「10℃以下」という目安の意味も見えてきます。黄色ブドウ球菌が毒素を作る温度域は10〜46℃、セレウス菌が増える温度域は10〜50℃。ちょうど、その入口の手前で止めるための数字だったと考えると、腑に落ちます。時間を数えるより温度を見たほうがいい理由も、ここにあります。
防災ちゃんねるでは、食と健康の備えを国際中医薬膳師の視点も交えてお伝えしています。東洋医学には、消化を担う「脾胃(ひい)」は冷えと湿気に弱く、不安や緊張が続くとその働きが落ちやすい、という考え方があります。停電の夜は、暑さも寝不足も心配ごとも重なりがちです。ふだんなら平気なものでも、体のほうが受け止めきれないことがある——そう思っておくと、「もったいない」より「今日はやめておこう」を選びやすくなります。
だから私は、迷ったときの基準をひとつだけ決めておくのがよいと考えています。「加熱すれば大丈夫」ではなく、「10℃を超えた時間が長そうなものは、加熱しても回さない」。これなら、暗い台所でも迷いません。
今日からできる小さな一歩
買い足すものはありません。今日、冷蔵庫を1回開けるだけでできることを3つ挙げます。
今夜の献立を、いちばん傷みやすいものから決めてみる
ドアポケットを「もう開けたもの」だけの場所にしてみる
マヨネーズやドレッシングを開けた日を、キャップに書いてみる
どれも、まず毎日の「これ、いつ開けたっけ」が減ります。停電したときに効いてくるのは、そのあとの話です。
とらまるくんと考えてみよう
順番があるんだね!ぼく、牛乳から気にすればいいんだ。あと、火を通しても消えないものがあるっていうのが、いちばんびっくりしたよ。
はい。においでも分からない、加熱でも戻せない。だからこそ、先に順番を決めておくことに意味があります。
ご自宅の冷蔵庫を思い浮かべてみてください。いちばん上の段には、いま何が入っているでしょうか。
停電と冷蔵庫について よくあるご質問
停電したとき、冷蔵庫は何時間もちますか?
日本の公的機関が時間で示した資料は、探した範囲では見当たりませんでした。目安として広く使われているのは米国CDCの資料で、ドアを開けない場合、冷蔵庫は約4時間、冷凍庫はぎっしり詰まっていれば48時間、半分ほどなら24時間とされています。ドアを開けるたびに短くなります。
停電のあと、牛乳は飲めますか?
開封済みの牛乳は、いちばん早いグループです。日本乳業協会は10℃以下で保存し早めに、開封すると賞味期限は無効になるとしています。庫内が10℃を超えていた時間が長そうなら、口をつけない判断が安心です。
卵は常温でも大丈夫ですか?
内閣府 食品安全委員会は、10℃以下の冷蔵保存を前提に説明しています。冷蔵庫に入れていた卵は早いグループに置き、使うときは生食を選ばず、75℃以上・1分以上加熱することがすすめられています。
マヨネーズはどうですか?
未開栓のものは常温で保存できるとメーカーが案内しています(直射日光を避け、涼しい場所で)。開栓後は冷蔵で1ヵ月が目安です。停電のときは、開栓後のものを「中くらい」のグループとして扱うと考えやすくなります。
しっかり加熱すれば食べられますか?
加熱は有効な手段ですが、それだけで安心とは言い切れません。内閣府 食品安全委員会のファクトシートでは、黄色ブドウ球菌の毒素は通常の加熱調理では活性を失わないとされ、セレウス菌の嘔吐毒は126℃で90分の加熱でも失活しないとされています。10℃を超えた時間が長そうなものは、加熱に頼らない判断が安心です。
においや見た目で判断してもいいですか?
小樽市は「食中毒菌が増殖していても、見た目やにおいに変化はありません」としています。不安が残るときは、賞味・消費期限内であっても口にしない判断が安心です。
この記事のポイント
- 冷蔵庫の中身は一斉に傷まない。早い・中くらい・ゆっくりの3つに分けておくと迷わない。
- 判断の軸は時間より温度。冷蔵庫は10℃以下が目安、冷蔵室の適温は4℃前後とされている。
- 時間の目安(冷蔵4時間・冷凍48/24時間)は米国CDCの資料。日本の公的資料に同じ形の記載は見つけられなかった。
- 卵は「ゆっくり」ではなく「早い」。10℃以下の冷蔵保存が前提とされ、使うときは75℃以上・1分以上の加熱を。
- 加熱で菌は減らせても、すでに作られた毒素は火を通しても消えないとされている。「加熱すれば大丈夫」に頼らない。
- においや見た目では分からない。菌が増えていても、変化は現れない。
順番だけ決めておけば、暗がりでも迷わない
停電した冷蔵庫の前で立ち止まるのは、知識が足りないからではなく、順番が決まっていないからだと思います。牛乳から。次に調理済みのもの。卵は加熱して。未開栓のマヨネーズは最後まで頼れる——その並びが頭に入っていれば、暗い台所でも手が動きます。
そして、この並びは特別なものではありません。ふだんの献立を考えるときの「早く使いたい順」と、ほとんど同じです。冷蔵庫用の温度計をひとつ置く、常温保存できる牛乳を棚に1本置く。どちらも、まず毎日の暮らしが少しラクになるための道具です。わが家の10の質問で、いま整っているところを確かめてみるのもおすすめです。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
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