断水で手が洗えないとき、アルコール消毒も一緒に備えておく
STEP3|暮らしを整える
断水で手が洗えないとき、アルコール消毒も一緒に備えておく
水が使えない日の手指衛生は、「落とす」と「減らす」を分けて考えると整理しやすくなります。目に見える汚れがあるときは水と石けんが先、そのあとにアルコール——この順番だけ覚えておくと、迷いが減ります。
断水でトイレが流せないときやお皿が洗えないときの備えについては、これまでの記事でお伝えしてきました。今日は、そのあいだにある「手を洗う」という、いちばん細かな部分に絞って一緒に考えてみましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
いつも使っているウェットティッシュと、玄関に置いてあるアルコールのボトル。その2つが、どんな場面でどちらの出番なのかを、家族が自然にわかっている——そんな状態をつくることを、このページでは目指します。
この記事でわかること
- 水が使えない日の手指衛生を、どんな順番で考えればよいか
- アルコール手指消毒剤とウェットティッシュの、役割の違い
- パッケージの「消毒」「除菌」という表示の読み分け方
- アルコールでは届きにくいものがあること
- 少ない水で手を流すときの考え方
「ウェットティッシュでふけば、手洗いのかわりになるの?」

ねえふくぼう先生、水が止まった日って、ウェットティッシュで手をふけば、それで手洗いのかわりになるの?

いい質問です。実は「ふき取ること」と「消毒すること」は、別の仕事なんです。今日はその使い分けを、一緒に見ていきましょう。
「ふく」と「消毒する」は、別の仕事をしている
食卓をさっとふくウェットティッシュ、玄関に置いたアルコールのボトル。どちらも、もともとは暮らしを気持ちよく保つために選んだものだと思います。その2つは、実は違う仕事をしています。片方は汚れをふき取る道具、もう片方は菌やウイルスの数を減らす道具。役割が分かれていると知っておくだけで、水が止まった日の選び方が、ぐっと迷わなくなります。
飲み水の話の陰に隠れる、「手を洗う水」
長年の消防活動の中で、大規模な災害の現場に関わる機会がありました。水道が止まった地域では、まず飲み水の確保が話題になります。ただ、暮らしを続けるうえで細かく効いてくるのは、手を洗うための水のほうだと感じる場面がありました。食事の前、トイレのあと、片づけのあと——一日のうちに何度も必要になるのに、そのたびに貴重な水を使うわけにはいきません。
備蓄の話になると、関心はどうしても飲料水と食料に集まります。手を洗うための水や、水を使わずに手指を清潔に保つ手立ては、後回しになりやすい——講話の場で感じてきたことのひとつです。
「落とす」と「減らす」を、分けて考える
厚生労働省の避難所等のトイレの消毒方法、手洗いなどについてでは、トイレを使ったあとの手洗いについて「流水が使用できる場合は、流水と石鹸で手を洗ってください」「速乾性アルコール手指消毒薬があれば、使用してください」と案内され、そのうえで「目に見える汚れがある場合」は流水と石けんを優先するよう添えられています。
同省の災害時における感染症対策のページでも、「流水で手洗いができない場合は、アルコールを含んだ手指消毒薬を使用しましょう」と紹介されています。
水と石けんは、汚れを落とすもの。アルコールは、菌やウイルスの数を減らすもの。汚れが残ったままではアルコールが届きにくくなるため、「落としてから、減らす」という順番になります。
パッケージの「消毒」と「除菌」は、意味が違う
厚生労働省・経済産業省・消費者庁の消毒・除菌方法に関する特設ページでは、言葉の違いがこう整理されています。「消毒」は菌やウイルスを無毒化することで、薬機法に基づき厚生労働大臣が品質・有効性・安全性を確認した「医薬品・医薬部外品」の製品に記されるもの。「除菌」は菌やウイルスの数を減らすことで、「医薬品・医薬部外品」以外の製品に記されることが多い、とされています。
同じページでは、手指など人体に用いる場合は「医薬品」「医薬部外品」の表示があるものを使うよう案内されており、アルコール消毒液については濃度70%以上95%以下のエタノールが挙げられています。
つまり、同じ「ウェットティッシュ」に見えても、医薬部外品として承認されたものと、汚れをふき取るための日用品とでは、できることが違います。次に買い足すとき、パッケージの隅にある表示を一度だけ見てみる——それだけで、備えの手ざわりが変わることにつながります。
アルコールだけでは、届きにくいものもある
厚生労働省のノロウイルスに関するQ&A(Q16)には、「消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください」と記されています。
同じQ16には、石けんそのものにノロウイルスを直接失活化する働きはないものの、手の脂肪などの汚れを落とすことで、ウイルスを手指から剥がれやすくする、という説明もあります。石けんは「殺す」のではなく「剥がす」——そう知っておくと、水と石けんを残しておく意味が腑に落ちます。
水が止まっている時期は、こうした感染症が広がりやすい環境にもなります。国立感染症研究所が災害時にまとめたリスクアセスメントでは、「断水の影響等により安全な水の利用が困難であり、衛生状態が維持できない避難所では、感染拡大のリスクは高い」と評価されています。
ふき取る(ウェットティッシュ)・減らす(医薬品/医薬部外品の手指消毒剤)・流す(ペットボトル1本の水)。この3つがそろっていると、その日の状況に合わせて選べます。
アルコールのボトルは、置き場所で使う回数が変わると感じています。玄関やキッチンの、手が自然に伸びる場所に置いておく。それだけで、水が使える日も使えない日も、同じ動作になります。年に一度、使用期限の表示を見ておくと、いざというときに慌てずにすみます。
今日からできる小さな一歩
すべてを一度に見直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
次の買い物で、いつものウェットティッシュをもう1袋だけ多めに選ぶ
手指消毒剤に「医薬品」「医薬部外品」の表示があるか、一度だけ確かめる
500mLのペットボトルを1本、「手を流すための水」として置き場所を決める
まずは今日、ひとつ試してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう

はい。どちらが上ということではなく、順番があるだけです。いつも使っているものの役割を知っておく——それだけで、水が止まった日の選び方が変わってくると考えています。
水が使えない日の手洗い よくある質問
ウェットティッシュだけでも大丈夫ですか?
汚れをふき取るという点では役に立ちます。ただ、厚生労働省の整理では「消毒」と表示できるのは医薬品・医薬部外品に限られます。まずふき取り、そのうえで医薬品・医薬部外品の手指消毒剤を使う——この順番にしておくと、安心につながります。
アルコール手指消毒剤は、どれくらい備えておけばいいですか?
使う頻度はご家庭ごとに違うため、一律の目安をお伝えするのは難しいところです。ふだん1本を使い切るまでの期間を目安に、常に1本多い状態を保っておく(使った分だけ買い足す)方法が、いちばん無理がないと考えています。
子どもの手にも使っていいですか?
製品ごとに対象や使い方が定められています。パッケージや添付文書の注意書きを確認し、肌に合わない場合は使用を控えてください。心配なときは、少量の水と石けんで洗える形を優先しましょう。
ノロウイルスに、アルコールは効かないのですか?
厚生労働省のノロウイルスに関するQ&A(Q16)では、消毒用エタノールによる手指消毒は「石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりません」としたうえで、すぐに手洗いができない場合の補助として用いるよう案内されています。使わないほうがよい、という意味ではありません。
水がコップ1杯しかないとき、どう洗えばいいですか?
少ない水でも、石けんをつけてよくもみ洗いしてから、細く流してすすぐと汚れを落としやすくなります。厚生労働省も、目に見える汚れがある場合は流水と石けんを優先するよう案内しています。すすいだあとは、清潔なタオルやペーパーで水気をふき取っておきましょう。
この記事のポイント
- 水が使えない日は、汚れを「落とす」水と石けんが先、数を「減らす」アルコールがあと。
- 目に見える汚れがあるときは、流水と石けんを優先する(厚生労働省)。
- 「消毒」と表示できるのは医薬品・医薬部外品。手指に使うものは表示を確かめて選ぶ。
- アルコールだけでは届きにくいものもあるため、少量の水で流せる形も残しておく。
いつものひと箱が、水の止まった日を支える
手を洗うという動作は、あまりに当たり前で、備えの話題にはなりにくいところです。けれど、水が止まった日にいちばん多く繰り返すのも、この動作です。いつものウェットティッシュをもう1袋、玄関のアルコールを1本、ペットボトルを1本。どれも新しく買いそろえるものではなく、いつもの買い物の延長でできることです。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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