留守番中に火が出たとき、体が「逃げる」を選んだ理由
STEP4|行動の設計図
留守番中に火が出たとき、体が「逃げる」を選んだ理由
子どもが少しずつ一人でできることを増やしていく——留守番も、その大切な成長のひとつです。ただ、その時間に火が出たら、子どもの体はどう動くのでしょうか。
「うちの子は留守番中、ちゃんと逃げられるだろうか」——そう考えたことがある方は、少なくないと思います。実は、強い怖さを感じた瞬間の体の動きには、ある自然な仕組みが関わっていると言われています。そして、その仕組みを知っておくことが、いざという時の安心につながっていきます。今日はその仕組みを、一緒にひも解いていきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事は、恐怖をあおるためのものではありません。留守番中に火が出るような場面で、子どもの心と体にどんな働きが起こりうるのか、そしてその働きをどう支えられるのかを知っておくことで、いざという時の安心につなげることが目標です。
まずは、強い怖さを感じた瞬間に起きている「闘争・逃走反応」と呼ばれる働きの正体から、一緒に確認していきましょう。
この記事でわかること
- 留守番中に火が出たとき、子どもの体に起こりやすい自然な反応
- その反応が、なぜ「消そうとする」より「逃げる」につながりやすいのか
- 事前の準備が、子どもの行動を後押ししてくれる理由
- 日常の中でできる、火の扱いや留守番に関する小さな準備習慣
- 子ども部屋の安全点検とあわせて考えておきたい視点
「留守番のとき、火が出たらちゃんと逃げられるかな?」
その気持ち、よくわかりますよ。
実は、強い怖さを感じたとき、体は「消す」より先に「逃げる」を選びやすいと言われています。それは、体に備わった自然な守り方なんですよ。
留守番、できることが増えるたびにうれしくなる
子どもが一人で留守番できるようになった日、少し誇らしそうな顔をしていた——そんな瞬間を、うれしく感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
できることが増えていく成長は、何より喜ばしいものです。ただ、その時間に、もし火が出たらどうなるでしょうか。実はこの問いへの答えにも、体に備わったある自然な仕組みが関わっていると考えられています。
留守番中に火が出たとき体がどう動くのかを知っておくことは、子どもの成長を見守る安心感を、さらに支えてくれる知識だと思います。
火が大きくなっていくのを見て、その子はためらわず外へ向かっていた
長年の消防活動の中で、子どもだけで留守番をしていた時間帯に火が出て、駆けつけた現場に立ち会ったことがあります。
何が火元だったのか、はっきりと言い切れることばかりではありません。大人のいない間に、火のそばで何かをしていたらしいと、後になって少しずつわかってくる——遊んでいたのか、台所に立っていたのか、最後まではっきりとは特定できないまま終わることもありました。
ただ共通していたのは、火が大きくなっていくのを見た瞬間、その子が消そうとする素振りを見せなかったことです。怖さのあまり、ただ夢中で外へ向かっていたようでした。
その姿を見て感じたのは、「逃げる」という行動は、教え込まれてできることというより、体に備わった自然な反応なのだということでした。
ここから、強い怖さを感じた瞬間に何が起きていて、その働きをどう支えられるのか、その仕組みを一緒に確認していきましょう。
1つ目|「闘争・逃走反応」とは、どんな働きか
強い恐怖を感じたとき、体は自動的に、目の前の危険と戦うか、それとも逃げるか、どちらかに備えようとすると言われています。
アメリカの生理学者ウォルター・キャノン氏は、1915年の著作の中で、この仕組みを「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」と名づけたとされています。目の前の危険が自分の力ではどうにもできないと感じるほど、「戦う」よりも「逃げる」が選ばれやすくなると考えられています。
つまり、火を消そうとせず逃げ出す判断は、勇気がないからではなく、体に備わった自然な守り方だと考えられています。「消せなかった」ことを、子ども自身に悔やませる必要はない、ということでもあります。
2つ目|留守番中の「火」は、どこで起きやすいか
子どもが火に触れる場面というと、外での火遊びを思い浮かべる方も多いかもしれません。ただ、実際には自宅で起きているケースも一定数あるようです。
東京消防庁の資料によると、平成30年からの5年間で確認された子どもの火遊びによる火災87件のうち、発火源はライターが約6割を占め、発生場所は屋外が55.2%、自宅が31.0%とされています。年齢別では10歳が最も多く、6〜12歳で全体の9割以上を占めるといわれています。
留守番中の自宅も、決して無縁の場所ではないということです。ライターやマッチが手の届く場所にあること・大人の目が届かない時間帯であることが重なるほど、火に触れる機会が生まれやすくなると考えられています。
3つ目|「決めておく」ことが、とっさの行動を後押しする
恐怖で頭が真っ白になっていても、あらかじめ決めておいた行動は、体が先に動いてくれることがあります。
心理学の分野では、「こうなったら、こうする」とあらかじめ具体的に決めておく工夫を「実行意図」と呼びます。米ニューヨーク大学の心理学者ピーター・ゴルヴィツァー氏と、英シェフィールド大学のポール・シーラン氏が2006年に94件の研究をまとめて分析した報告では、こうした事前の決めごとがあると、とっさの場面でも行動が滞りなく始まりやすくなる効果が、中程度からやや大きい水準で確認されたとされています。
子どもと「けむりや火を見たら、すぐ外へ逃げる」と話し合っておくことも、まさにこの「事前に決めておく」という工夫のひとつです。難しい約束でなくてよく、短い言葉ひとつで十分だと考えています。
4つ目|日常の小さな準備が、いざという時の迷いを減らす
この働きへの向き合い方も、特別な訓練だけではありません。ライターやマッチを子どもの目に触れない場所にしまっておくことや、逃げた後に頼れる場所を決めておくことが、そのまま準備につながっていきます。
ライターやマッチは、子どもの手の届かない場所へ。台所に立つときは、一緒に火の扱いを教える時間にする。子ども部屋の安全点検とあわせて、火の元まわりも見直しておくと、より安心につながります。
正直に言うと、あの現場で、消そうとせず外へ逃げ出したその子の姿は、今でも印象に残っています。もしもっと早く「逃げていいんだよ」と伝えられていたら、怖さはもう少し和らいでいたかもしれない——そう感じています。
「消せなかった」ことを悔やむのではなく、「逃げられた」ことを、まずしっかり認めてあげたいと、私自身は考えています。
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に見直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
ライターやマッチを、子どもの目に触れない・手の届かない場所にしまっておく
「けむりや火を見たら、消そうとせず、まず外へ逃げる」を、子どもと一緒に決めておく
逃げた後に頼れる先(隣の家・近所の人・集合場所)を、家族で共有しておく
まずは今日、ひとつ試してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
もしもの時、お子さんはどこに逃げて、誰に助けを求めるか、決めていますか。
その小さな決めごとが、いざという時の迷いを減らしてくれるかもしれません。
留守番中の火 よくある質問
留守番中に火が出たら、子どもはまず何をすればいいですか?
火を消そうとせず、すぐに外へ逃げることを最優先に考えてください。すでに火が広がっている場合は、無理に持ち物を取りに戻らず、そのまま安全な場所へ向かうことが大切だと考えられています。
何歳頃から留守番をさせても大丈夫ですか?
年齢や性格によって差があり、一概には言えません。留守番を始める際は、火の扱いや逃げ方について、あらかじめ具体的に話し合っておくことが安心につながります。
子どもが火を消そうとしてしまわないか心配です。
「消せなかった」ことを責めるのではなく、「逃げられた」ことを日頃から肯定してあげることで、いざという時にためらわず逃げやすくなると考えられています。
ライターやマッチはどこに置けばいいですか?
東京消防庁の資料でも、子どもの目に触れない・手の届かない場所での保管が呼びかけられています。普段使わない場所にしまっておくことも一つの方法です。
逃げた後、子どもは誰を頼ればいいですか?
隣の家や近所の方、あらかじめ決めた集合場所など、頼れる先を具体的に決めておくと、子ども自身も動きやすくなると考えられています。
この記事のポイント
- 留守番中に火が出て強い怖さを感じたとき、体が「消す」より先に「逃げる」を選ぶのは、自然な守り方だと考えられている。
- この働きは「闘争・逃走反応」と呼ばれ、目の前の危険が自分の力ではどうにもできないと感じるほど強く出やすい。
- 東京消防庁の資料では、子どもの火遊びによる火災は自宅でも一定数起きているとされている。
- 「けむりや火を見たら、すぐ外へ逃げる」を事前に決めておくと、とっさの場面でも行動が後押しされやすくなる。
- ライターやマッチの置き場所を見直し、逃げた後に頼れる先を家族で共有しておく小さな準備が、そのまま安心につながっていく。
まとめ
留守番中に火が出たとき、子どもが消そうとせず逃げ出すことは、悪いことでも特別なことでもありません。それは、強い怖さを感じた瞬間に体に備わっている、自然な守り方なのだと、これまでの経験を通じて感じてきました。
ただ、その働きをどう支えられるかは、事前にどれだけ準備できていたかで変わってくるようにも感じています。ライターやマッチの置き場所を見直すこと。「けむりや火を見たら、まず外へ逃げる」を、子どもと一緒に決めておくこと。それが、この自然な働きと無理なく付き合っていくための、いちばん身近な準備なのかもしれません。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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