家族との「もしもの話」を、つい避けてしまう心の仕組み
STEP4|行動の設計図
家族との「もしもの話」を、つい避けてしまう心の仕組み
「もしもの話をしなきゃ」と思うほど、なぜか切り出しにくくなる——そんな経験はありませんか。実は、もしもの話は始まりからネガティブに聞こえやすく、日常の会話では後回しにされやすい傾向があると考えられています。
こうして記事を読みに来てくださっている時点で、実はもう最初の一歩を踏み出しているのかもしれません。今日は、その一歩から先へ進むための、小さなヒントを一緒に見つけていきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事は、「もしもの話をしていないあなたは備えが足りない」と伝えるためのものではありません。もしもの話がなぜ後回しになりやすいのかを先に理解したうえで、今日から試せる具体的で小さな一歩を一つ、持ち帰っていただくことが目標です。
まずは、もしもの話が後回しになりやすい理由から確認していきましょう。
この記事でわかること
- 「もしもの話」が家族の日常会話の中で後回しになりやすい理由
- 実際に災害を経験した人ほど、行動に移しやすいとされる理由
- この記事を読んでいる時点で、すでに踏み出せている「最初の一歩」
- 「もしもの話」を、重くなりすぎずに始めるための考え方
- 今日から試せる、具体的で小さな一歩
「家族でもしもの話をしようと思っても、なんか続かないんだよね」
実は、それは多くのご家庭で起きていることのようです。
もしもの話は、始まりからしてネガティブに聞こえやすいテーマだからこそ、日常の会話では後回しにされやすいのだと考えられています。
「もしもの話」が、なぜ後回しになりやすいのか
「もしもの話をしよう」と思っても、いざ切り出そうとすると、なんとなく重い空気になってしまう——そう感じたことがある方は、少なくないかもしれません。もしもの話は、その性質上「大切な人と会えなくなるかもしれない」「暮らしが立ち行かなくなるかもしれない」といった、ネガティブな仮定から始まります。楽しい日常会話の延長線上には乗りにくく、後回しにされやすいテーマだと考えられます。
これは「話し合いをしていないあなたが悪い」という話ではなく、もしもの話そのものが持つ性質が、後回しにしやすくしているという見方です。
なぜ後回しになりやすいのかを先に理解したうえで、そこから動き出すための小さな一歩を、この記事では一緒に考えていきます。
講話の場で感じてきた、「もしもの話」への温度差
防災士として、ご家庭や地域向けの講話をお話しする機会の中で、「もしもの話」というテーマ自体に、最初から前向きに向き合ってくださる方は、実はそれほど多くないと感じてきました。多くの方にとって、もしもの話は日常の会話の中では自然と後回しになりやすいテーマのようです。
一方で、実際に大きな地震や災害を経験したことがある方、あるいは報道などで大きな災害を身近に感じた方は、こちらから多くを説明しなくても、ご自身から行動に移していかれる印象を、講話の現場で何度も持ってきました。
ただ、講話に足を運んでくださる方々を見ていると、そもそも受け身な気持ちで来られているわけではなく、「学んでおきたい」という能動的な気持ちを持って参加されている方がほとんどです。そのことに気づいてから、こうして記事を読んでくださっている時点で、すでに同じように学ぼうとする一歩を踏み出してくださっているのだと、あらためて感じるようになりました。
では、なぜ「もしもの話」は後回しになりやすく、実際の経験がある人ほど動けるのでしょうか。ここから、その理由を一緒に確認していきましょう。
1つ目|悪い情報は、無意識に避けようとする傾向がある
心理学の分野では、悪いニュースや不安に感じる情報に触れたとき、人はそれ以上の情報を避けようとする傾向があることが指摘されています。2009年に発表されたカールソン氏・ローウェンスタイン氏・セピ氏の研究(Journal of Risk and Uncertainty掲載)では、投資家が保有資産について悪い情報を目にした後、それ以上の情報確認を避ける「頭を砂に埋める」ような行動が見られたと報告されています(Journal of Risk and Uncertainty掲載論文参照)。
もしもの話も、始まりからしてネガティブな響きを持つテーマです。同じような回避の心理が働きやすいのだと考えると、後回しにしてしまうのも自然な反応だと捉えておけそうです。
2つ目|実際に経験した記憶があると、行動に移しやすくなる
一方で、実際に経験した記憶や、鮮明に覚えている出来事は、その後の判断に強く影響することが知られています。1973年に心理学者トヴェルスキー氏とカーネマン氏が発表した研究(Cognitive Psychology掲載)では、人は思い出しやすい記憶をもとにリスクを判断しやすいという「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれる傾向が示されています(解説ページ参照)。大きな災害を実際に経験したり、身近に感じたりした記憶があると、「もしも」がより現実的なものとして思い出されやすくなり、行動につながりやすいと考えられます。
逆に言えば、経験がまだない方にとって「もしも」がイメージしにくいのは自然なことだといえそうです。だからこそ、次に紹介する視点が大切になってきます。
3つ目|情報を探している時点で、すでに「準備」の段階に近づいている
行動の心理学には、人が変化を起こすまでにいくつかの段階を経るという考え方があります。1983年にプロチャスカ氏とディクレメンテ氏が発表した行動変容のステージモデルでは、「まだ関心を持っていない段階」「関心を持ち始めた段階」「小さな一歩を踏み出す準備ができている段階」というように、行動が進んでいく過程が整理されています(解説ページ参照)。こうして情報を探し、記事を読み進めてくださっている時点で、多くの方はすでに「関心を持ち始めた」段階よりも先、行動の準備に近い段階まで進んでいると考えられます。
「もしもの話をすべきだと分かっているのに、できていない」と感じる必要はなさそうです。すでに一歩目を踏み出せている、という捉え方のほうが実情に近いのかもしれません。
4つ目|大きな決意より、具体的で小さな一歩が行動につながる
行動を先延ばしにしないための工夫として、心理学では「if-thenプランニング」と呼ばれる考え方が知られています。心理学者ゴルヴィツァー氏の研究をはじめとする複数の研究では、「もし〇〇の場面になったら、△△をする」というように、具体的な状況と行動をあらかじめ結びつけておくことで、実際に行動へつながりやすくなるという結果が報告されています(米国立がん研究所の解説ページ参照)。「家族でもしもの話をする」という大きな目標を掲げるより、「次の食事のときに、集合場所だけ聞いてみる」といった具体的で小さな一歩を決めておくほうが、行動につながりやすいと考えられます。
集合場所や連絡手段など、もしもの話で確認しておきたい具体的な項目については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
講話の場で「もしもの話をしましょう」とだけお伝えしても、なかなか響かないと感じることがあります。もしもの話は、始まりからしてネガティブに聞こえやすいテーマだからこそ、伝え方を工夫する必要があるのだと、現場で感じてきました。
大切なのは、もしもの話をすべきだと繰り返し伝えることよりも、今日から試せる具体的で小さな一歩を、一つだけお伝えすることなのだと思っています。
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に見直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
「もしもの話をしなきゃ」ではなく「今日は一つだけ聞いてみる」と、目標を小さくしてみる
次の食事や車の中など、日常のタイミングで、集合場所か連絡手段のどちらか一つだけ確認してみる
家族の誰かが実際に見聞きした出来事があれば、それを話のきっかけにしてみる
まずは今日、ひとつ試してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
あなたは、もしもの話について、どんなイメージを持っていたでしょうか。
「話さなきゃ」ではなく「一つだけ聞いてみる」——そんな視点を、少し心に留めておいてもらえたらうれしいです。
家族との「もしもの話」 よくある質問
もしもの話は、一度にすべて話す必要がありますか?
一度にすべてを話す必要はないと考えられています。まずは集合場所や連絡手段など、一つの項目から始めることでも十分な備えにつながります。
子どもにも、もしもの話をしたほうがいいですか?
年齢に応じた伝え方であれば、家族の一員として一緒に確認しておくことは有効だと考えられます。難しい言葉を使わず、日常の延長として話してみることがポイントです。
家族が「その話はやめて」と嫌がる場合はどうすればいいですか?
無理に話を進める必要はありません。もしもの話はネガティブに感じられやすいテーマのため、まずは一つの項目だけを軽く聞いてみるところから始めてみるのも一つの方法です。
実際に災害を経験していないと、もしもの話は難しいですか?
経験がなくても、具体的で小さな一歩から始めることで、行動につなげやすくなると考えられています。経験の有無にかかわらず、今日から始めることができます。
どのタイミングで話すのがいいですか?
特別な時間を設けるより、食事中や移動中など、日常の会話の延長で話すほうが、負担なく続けやすいとされています。
この記事のポイント
- 「もしもの話」は始まりからネガティブに聞こえやすく、日常会話の中では後回しにされやすい傾向がある。
- 実際に大きな災害を経験したり、身近に感じたりした記憶があると、行動に移しやすくなると考えられている。
- 情報を探し、この記事を読んでいる時点で、多くの方はすでに行動の準備に近い段階まで進んでいる。
- 「もしもの話をすべき」と繰り返し伝えるより、具体的で小さな一歩を決めておくほうが、行動につながりやすいとされている。
- 集合場所や連絡手段など、確認しておきたい項目は一つずつで十分。
- 特別な時間を設けなくても、日常の会話の延長で始めることができる。
まとめ
「もしもの話をしなきゃ」と思うほど、かえって切り出しにくくなる——そう感じるのは、自然なことなのかもしれません。もしもの話は、その性質上ネガティブな響きを持ちやすく、日常の会話の中では後回しにされやすい傾向があります。ただ、こうして記事を読み、情報を探しているという行動自体が、すでに「学ぼう」とする一歩なのだと考えられます。
完璧な話し合いを目指す必要はありません。まずは、次の食事や移動のタイミングで、集合場所か連絡手段のどちらか一つだけ聞いてみること。それだけで、十分な一歩になります。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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