避難所は「誰かが運営してくれる場所」だと思ってしまう心の仕組み
STEP4|行動の設計図
避難所は「誰かが運営してくれる場所」だと思ってしまう心の仕組み
「避難所に行けば、誰かが何とかしてくれる」——そう思っていませんか。実は避難所は、住まいを失った大勢の人が同じ場所で生活せざるを得ないからこそ、そこにいる一人ひとりの協力があってはじめて成り立つ場所だと考えられています。
「備えている・いない」という話の一歩手前に、「避難所は誰が動かす場所なのか」というイメージのズレがあるのかもしれません。今日は、そのイメージと実際の姿の違いを、一緒にひも解いていきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事は、避難所の不便さを強調するためのものではありません。「避難所に行けば安心」という漠然としたイメージと、実際の運営の仕組みとの間にある差を知り、「自分たちで作っていく場所」という視点を一つ持っておくことが目標です。
まずは、行政の支援にもある「限り」から確認していきましょう。
この記事でわかること
- 避難所運営に対する「誰かがやってくれる」というイメージと、実際の姿の違い
- 大きな災害のときに、行政の支援(公助)にも限りがある理由
- 避難所の運営が、住民同士の協力を前提に考えられている理由
- 「誰かがやってくれるだろう」と感じてしまう心の仕組み
- 日常でも起こりやすい、その心の仕組みとの共通点
「避難所に行けば、水も食べ物も毛布も、ちゃんとあるんだよね?」
それが、多くの方が持っているイメージと、実際の避難所の姿には、少し差があるようなんです。
避難所は、行政が用意してくれる場所というより、そこに集まった人たちが一緒に作っていく場所だと考えられています。
避難所が、そもそも「共同生活の場」として作られている理由
住まいを失った方が一度に大勢出たとき、行政がその一人ひとりに個別の住まいをすぐに新しく用意することは、現実的には難しいとされています。多くの人を同時に受け入れられる公共施設は、学校をはじめとしたごく限られた場所しかありません。
だからこそ避難所は、最初から「面識のない人同士が、一つの場所で共同生活を送る」ことを前提に作られています。そこにいる人が被災していて動きづらい事情を抱えていたとしても、「自分たちが今いる生活の場」である以上、できる範囲で協力し合うことが前提になっている——そう捉えておくほうが、実情に近いのかもしれません。
「自分は被災者だから」と一歩引いてしまうのではなく、そこが自分たちの生活の場である以上、できることを少しずつ持ち寄っていくこと。それが、この記事でお伝えしたい視点です。
講話の場で感じてきた、「行政がやってくれる」というイメージ
防災士として講話をお話しする機会の中で、参加者の方々のお話をうかがうと、避難所の運営について「行政の人たちがやってくれるもの」というイメージを持っている方が、今でも少なくないと感じてきました。
実際には、避難所に配置される行政の職員は数人程度であることが多く、しかもその方々自身が被災した地域の一員であり、それぞれに守るべき家族があります。すべての避難者の暮らしを、行政の職員だけで支えきることは、現実的には難しいというのが実情です。
知り合いの行政職員から聞いた話では、避難所に用意できる物資も、初動の段階では水と主食(アルファ化米など)が中心にとどまることが多く、毛布や簡易ベッドもごくわずかしか用意できないことがあるといいます。この点は私自身が直接確認したことではなく、伝聞として受け止めていますが、講話の場で感じてきた印象と重なる部分が多くありました。
こうした現実を知るたびに、行政に任せきりにするのではなく、集まった人たち同士が助け合いながら運営していくという視点が欠かせないのだと、あらためて感じています。
なぜ、多くの方が「行政がやってくれる」というイメージを持ちやすいのでしょうか。ここから、その理由と、避難所の運営が実際にはどのように考えられているのかを、一緒に確認していきましょう。
1つ目|大きな災害では、行政の支援にも限りがある
大きな災害が起きたとき、「自分の身を守る=自助」「近所や仲間同士で助け合う=共助」「行政による支援=公助」という3つの支え合いが必要だと考えられています。内閣府の防災白書でも、被害が広い範囲に及ぶ大規模な災害では、公助だけに頼ることには限界があるという趣旨が取り上げられています。
行政の職員も、被害を受けた地域に暮らす一人です。無限に動けるわけではないと知っておくことが、避難所という場所を考えるうえでの出発点になりそうです。
2つ目|避難所は「被災者自身が助け合いながら運営する」ことが原則
内閣府(防災担当)の避難所運営ガイドラインでは、避難所の運営について「被災者自らが行動し、助け合いながら避難所を運営する」ことが原則として紹介されています。避難所運営委員会には、避難者の代表も加わる仕組みが想定されているとのことです。
同じガイドラインでは、対応する職員の人数が足りず手が回らない場面があることや、支援物資が初動から十分に整うとは限らないことにも触れられています。「行政に任せておけば安心」というより、「みんなで作っていく場所」という捉え方のほうが、実情に近いのかもしれません。
3つ目|人が多い場面ほど、「自分がやらなきゃ」という気持ちは薄れやすい
なぜ、「誰かがやってくれるだろう」と感じてしまうのでしょうか。心理学の分野では、周囲に人が多いほど、一人ひとりが感じる「自分が動かなければ」という気持ちが薄れやすいことが知られています。米国の心理学者ダーリー氏とラタネ氏が1968年にまとめた研究では、周囲に多くの人がいる状況ほど、一人ひとりが行動を起こしにくくなる傾向が確認されたとされています(ペンシルベニア州立大学の解説ページ参照)。
この研究はもともと緊急時の場面を対象にしたものであり、避難所の運営にそのまま当てはまるとは限りません。ただ、「人が多いほど、一人ひとりの当事者意識が薄れやすい」という傾向そのものは、避難所のような大勢が集まる場所でも共通して起こりうると考えられます。
4つ目|「気づいた人がやる」習慣が、そのまま備えの力になる
この「誰かがやってくれるだろう」という感覚は、日常のいろいろな場面にも共通しています。家族で使うリビングやキッチン、地域の集まりなど、人数が増えるほど、一人ひとりの当事者意識は薄れやすくなる傾向があります。日頃から「気づいた人が動く」という小さな習慣を積み重ねておくことが、避難所のような共同生活の場での心構えにもつながっていくと考えられています。
自宅の安全が保たれている場合には、在宅避難という選択肢を検討しておくことも一つの方法です。在宅避難を選ぶ際に整理しておきたい条件については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
正直なところ、講話の場で「避難所に行けば何とかなる」という空気を感じるたびに、少し複雑な気持ちになります。行政の職員も、被災した地域に暮らす一人です。避難所という場所は、そこにいる一人ひとりが少しずつ役割を持ち寄ることで、はじめて成り立っていくのだと感じています。
2026年秋ごろには防災庁の発足も予定されていますが、発足してすぐにすべてが変わるわけではないだろうとも考えています。制度がどう整っても、住民同士の支え合いが土台になることは、これからも変わらないのだと思います。(防災庁についてはこちらの記事でも紹介しています)
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に見直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
「行政に任せておけば大丈夫」ではなく「自分たちで作っていく場所」と、一度言葉にしてみる
自宅の安全が保たれている場合の在宅避難という選択肢について、家族で一度話しておく
自分にできそうな小さな役割(声をかける、配布を手伝う等)を、あらかじめ考えてみる
まずは今日、ひとつ試してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
あなたは、避難所について、どんなイメージを持っていたでしょうか。
「誰かがやってくれる」ではなく「自分たちで作っていく」——そんな視点を、少し心に留めておいてもらえたらうれしいです。
避難所の運営 よくある質問
避難所には、最低限どんなものが用意されていますか?
一般的には、飲料水や主食(アルファ化米など)を中心に用意される場合が多いとされています。毛布や簡易ベッドなどは数に限りがあることもあり、必ずしも十分に行き渡るとは限らないと考えられています。
避難所の運営は、誰が担うのですか?
内閣府の避難所運営ガイドラインでは、被災者自身が助け合いながら運営することを原則とし、行政はそれを支援する立場として紹介されています。避難所運営委員会には、避難者の代表も加わる仕組みが想定されています。
在宅避難という選択肢は、どんな場合に検討できますか?
自宅の安全が保たれている場合の選択肢の一つとして紹介されています。整理しておきたい条件については、関連記事もあわせて参考にしてみてください。
「誰かがやってくれるだろう」と感じてしまうのは、自分だけでしょうか?
心理学の研究でも、人が多い場面ほど一人ひとりの当事者意識が薄れやすいことが指摘されており、多くの人に起こりうる自然な傾向だと考えられています。
防災庁ができたら、避難所の状況は変わりますか?
2026年秋ごろに発足が予定されていますが、発足してすぐにすべての課題が解決するわけではないと考えられます。制度がどう整っても、住民同士の支え合いという土台は変わらず大切であり続けると考えられます。
この記事のポイント
- 「避難所に行けば、行政が運営してくれる」というイメージと、実際の運営体制には差がある。
- 多くの人を一度に受け入れられる場所は、学校をはじめとしたごく限られた公共施設しかなく、避難所はもともと共同生活を前提に作られている。
- 内閣府の防災白書でも、大規模災害時の公助には限界があることが指摘されている。
- 避難所運営ガイドラインは、被災者自身が助け合いながら運営することを原則としている。
- 「誰かがやってくれるだろう」と感じてしまうのは、人が集まる場面で起こりやすい自然な心理的傾向。
- まずは「自分たちで作っていく場所」という認識を持つことが、心の備えになる。
まとめ
「避難所に行けば、誰かが何とかしてくれる」——そのイメージは、実際の避難所の姿と少し違うのかもしれません。住まいを失った大勢の人を一度に受け入れられる場所は、学校をはじめとしたごく限られた公共施設しかなく、そこにいる一人ひとりの協力があってはじめて、避難所という場所は成り立っています。行政の職員も被災した地域に暮らす一人であり、無限に動けるわけではない。だからこそ、避難所は集まった人たち同士が助け合いながら作っていく場所なのだと、講話の場で何度も感じてきました。
完璧な備えは必要ありません。まずは「自分たちで作っていく場所」という意識を、一度持ってみること。それだけで、いざという時の心構えが少し変わってくるのかもしれません。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
あわせて読んでおくと、理解がさらに深まります。
いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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現場経験や実践例を交えながら、より実践的に学べる設計図を少しずつ育てています。
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- 心の仕組みと行動習慣のnote教材
順次公開予定です。更新をお待ちください。
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