いざというときの行動知識

「やけどは冷やせば冷やすほどいい」——その考え方、少し違うかもしれません

応急手当の本と救急セット、冷水を入れたボウルと白いタオルが並ぶ日本のリビング
のりまつ

いざというときの行動知識

「やけどは冷やせば冷やすほどいい」——その考え方、少し違うかもしれません

POSITION

いざというときの行動知識

この記事は、本質の防災4STEPの「STEP4|行動を決める」で心構えを整えたあと、実際の応急手当の基本を扱う記事です。応急手当の基本を確認した方も、この記事から読み始めた方も、対象別に具体的な内容を確認していただけます。

やけどをしたら、とにかく水で冷やす——多くの方がそう知っていると思います。ただ、冷やす時間や方法は、やけどの範囲や年齢によって、実は変える必要があります。

応急手当の「まず冷やす」という目的は共通していても、どのくらいの時間、どんな方法で冷やすかは、範囲や年齢によって変わってきます。そして何より、やけどをしてから冷やし始めるまでの時間をどれだけ短くできるかが、基本の中の基本だとされています。今日は、今の正しい情報を、対象別に具体的に確認していきましょう。

30 SEC SUMMARY

30秒でわかるまとめ

何よりもまず、やけどをしてから冷やし始めるまでの時間を、どれだけ短くできるかが基本とされています。
小さな範囲のやけどは、蛇口の流水を直接強く当てず、10〜20分以上を目安に冷やすことがすすめられています。
服が熱いお湯などで濡れた場合は、無理に脱がさず、服の上から冷やすことがすすめられています。
広い範囲のやけどは、冷やしすぎによる体温の低下にも注意が必要とされ、特に子どもや高齢者は10分以上の冷却を避けるべきとされています。子どもは皮膚が薄く、同じ温度でも深いやけどになりやすいとされています。
やけどの範囲は、開いた手のひら全体を「からだの表面積のおよそ1%」とする「手掌法」で見当をつけられるとされています。
水ぶくれ、顔・手足の関節部分・陰部のやけど、範囲が大きい、乳幼児・高齢者である——いずれかに当てはまる、あるいは気になるときは、医療機関を受診しましょう。
GOAL

このページが目指すこと

この記事は、やけどの手当をこの記事だけで習得していただくためのものではありません。「範囲や年齢によって、冷やし方の力点が変わる」という今の基本的な考え方を、具体的な数字とともに知っておくことが目標です。実際の手当は、ぜひ公的機関の応急手当講習で身につけてみてください。

まずは、今実際にどう対応するとされているのかを、確認していきましょう。

FOR YOU

この記事でわかること

  • 小さな範囲のやけどをしたときの、今の冷やし方の基本
  • 広い範囲のやけどで、逆に注意しておきたいこと・範囲や年齢が影響する理由
  • 手のひらを使ったやけどの範囲の目安の付け方(手掌法)
  • 水ぶくれや皮膚の変化、部位・年齢から見た、病院に行く目安
  • 「味噌を塗る」といった昔ながらの対処法が、今どう扱われているか
  • 今日から確認できる、身近な一歩
QUESTION

「やけどは、とにかく長く冷やせば冷やすほど安心なんだよね?」

とらまるくん
とらまるくん
先生、前に聞いたことがあるんだけど、やけどはとにかく長く冷やせば冷やすほど安心なんだよね?
ふくぼう先生
ふくぼう先生

実は、そうとも言い切れないんです。

冷やす時間や方法は、やけどの範囲によって変わってきます。まずは、その具体的な違いから見ていきましょう。

INTRODUCTION

やけどの手当は、「範囲がどれくらいか」によって力点が変わります

やけどというと、とにかく水で冷やしておけば安心、というイメージを持たれているかもしれません。ただ実際には、範囲が小さいやけどと、範囲が広いやけどとでは、気をつけるべきポイントが少し変わってきます。

これは、広い範囲を長く冷やし続けると、体温が下がりすぎてしまうリスクがあるためです。「とにかく長く冷やせば冷やすほど安心」と思い込んでしまうと、かえって思わぬ負担をかけてしまう可能性があります。

まずは、今実際にどう対応するとされているのかを、具体的な時間の目安も交えながら、この記事では一緒に確認していきます。

STORY|「冷やし始めるまでの数分」を、講習の中で伝えてきたこと

応急手当講習で、冷却の時間や方法を伝えてきた経験

応急手当講習を担当する中で、やけどの手当について、冷やす時間や方法を伝える機会が数多くあります。

その中で感じてきたのは、「冷やす」ということ自体は多くの方がご存じでも、「どれくらいの時間、どんな方法で冷やすか」までは、意外と知られていないということです。

やけどは、受傷した直後、どれだけ早く冷やし始められるかが、その後の状態に影響すると感じてきました。だからこそ、講習の場では、冷やす「時間」や「方法」を具体的に伝えることを大切にしてきました。

ここから、この実感を確かめる意味でも、今の正しい情報を対象別に具体的に確認し、最後に、古い対処法が今も語られる理由にも軽く触れていきます。

CHECK POINT①|何より、冷やし始めるまでの時間を短くする

1つ目|小さな範囲のやけどは、すぐに・10〜20分以上を目安に冷やす

こども家庭庁が公開している資料では、やけどをしたら「すぐに10分から20分以上冷やしましょう」とされています。日本赤十字社の講習内容でも、服が熱いお湯などで濡れた場合は「無理に脱がさずそのままの状態で急いで冷やします」とされており、複数の公的資料に共通しているのは、冷やす時間の長さ以上に、まず冷やし始めるまでの早さだと考えられます。刺激を避けるため、蛇口から流れる水道水やシャワーを直接当てるのではなく、容器に溜めた水で冷やす方法が紹介されています。

FIELD MEMO

日本医師会が公開している子ども向けの解説でも「最低でも10分は冷やしましょう」とされており、軽い場合は10〜20分ほど冷やすことが目安として紹介されています。時間の目安を覚えておくことも大切ですが、まずは「すぐに冷やし始める」ことが基本の中の基本だと考えられています。

CHECK POINT②|範囲と年齢によって、注意する方向が変わる場合

2つ目|広い範囲のやけどは、逆に冷やしすぎに注意が必要

日本赤十字社の講習内容によると、やけどは赤くなる程度の1度、水ぶくれができる2度、皮膚の色が変わり感覚がなくなる3度に分けて説明されています。範囲の見当をつける方法として、MSDマニュアル(プロフェッショナル版)では、開いた手のひら全体の広さを「からだの表面積のおよそ1%」とする「手掌法」が、部分的なやけどの範囲を確認する目安として紹介されています。範囲が広い場合は、体温が下がりすぎることを防ぐため「10分以上、広範囲を冷却することは避けて手当をします」とされ、特に子どもや高齢者は低体温に注意するよう案内されています。重症の目安は、成人ではからだの表面積のおよそ20〜30%以上、乳幼児ではおよそ10〜15%以上とされており、同じ「広い範囲」でも、子どものほうが小さい面積で重症の基準に達するとされています。

FIELD MEMO

「小さな範囲は冷やす時間を確保する」「広い範囲は冷やしすぎに注意する」——同じ「冷やす」でも、範囲によって気をつける方向が変わる点を知っておくと安心です。年齢が影響する理由の一つとして、東京都の資料では「子どもは大人よりも皮膚が薄いので、同じ温度でも深いやけどになりやすい」とされています。あわせてMSDマニュアルでも、2歳未満や60歳以上は重い合併症のリスクが高まる年齢として挙げられています。広範囲の場合は、やけどをした部分を中心に冷やしながら、からだ全体の保温にも気を配ることがすすめられます。

CHECK POINT③|水ぶくれの扱いと、病院に行く目安

3つ目|水ぶくれはつぶさず、範囲や状態で受診を判断する

総務省消防庁の応急手当に関する資料では、やけどでできた水ぶくれについて「潰さずにそっと冷却し、病院を受診しましょう」とされています。皮膚の色が白くなったり黒く焦げたりしているような深いやけどは、痛みを感じにくいことがあっても、病院を受診しましょう。こども家庭庁の資料でも、手のひらより大きい範囲や水ぶくれがある場合は病院の受診を、広範囲や顔面のやけどは救急要請を検討する目安として紹介されています。MSDマニュアルでも、顔・手・足の関節部分・陰部といった部位のやけどは、範囲の大小にかかわらず専門の医療機関を受診する目安として挙げられています。

受診・救急要請を検討する目安
  • 範囲:手のひら1枚分以上の広さがある(手のひら全体でおよそ1%が目安)
  • 部位:顔・手足の関節部分・陰部にやけどがある
  • 症状:水ぶくれができている、皮膚の色が白っぽく・黒っぽく変わっている
  • 対象:乳幼児(特に3歳未満)または高齢者である

この記事では基本的な考え方の紹介にとどめています。上記のいずれかに当てはまるときや、範囲・程度の判断に迷ったとき、少しでも気になると感じたときは、様子を見すぎずに医療機関を受診しましょう。後から重くなってから気づくよりも、早めに相談しておくほうが安心です。

CHECK POINT④|「味噌を塗る」といった対処法が、今も語られる理由

4つ目|古い対処法は、公的な情報として今は確認できない

ここまで紹介した内容は、いずれも現在の公的な情報にもとづくものです。「やけどには味噌や油を塗るとよい」といった対処法は、現在確認できる消防庁・こども家庭庁・日本赤十字社・日本医師会などの公的な資料には含まれていません。心理学の分野では、一度覚えた情報は訂正されたあとも判断に影響を与え続けやすいことが知られており(2012年、ルワンドウスキー氏らの研究)、こうした対処法も、こうした形で今も語られ続けているのかもしれません。

FIELD MEMO

古い知識を持っていたこと自体を気にする必要はありません。数年に一度、今の基準を確認し直す機会を持てば十分だと考えられます。

SOURCES|この記事で参考にした情報

この記事で参考にした情報

本文中で紹介した内容は、以下の公的機関・研究にもとづいています。最新の内容は、各リンク先で随時更新されています。

  • こども家庭庁もしもの時の「応急手当方法」 記事を見る ›
  • 総務省消防庁応急手当WEB講習|やけど(熱傷)の応急手当 記事を見る ›
  • 日本赤十字社熱傷(やけど)|講習の内容について 記事を見る ›
  • 日本医師会白クマ先生の子ども診療所|やけど 記事を見る ›
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版熱傷 記事を見る ›
  • 東京都子供を事故から守る!子供セーフティプロジェクト|子どもをやけど事故から守る予防策とは? 記事を見る ›
  • 学術研究(参考)Lewandowsky et al. (2012) Misinformation and Its Correction 論文を見る ›

実際の手当は、消防署や日本赤十字社の応急手当講習で確認・練習しておくことをおすすめします。

ふくぼう先生
FIELD MEMO ふくぼう先生メモ

講習の場で「とにかく冷やせばいいんですよね」というお声をいただくたびに、まずは「今、範囲によってどう気をつけ方が違うか」を一緒に確認するようにしています。多くの方が、良かれと思って一生懸命冷やそうとしてくださっているからこそ、その気持ちが正しい方向に向かうお手伝いができればと思っています。

大切なのは、冷やすこと自体を否定することではなく、範囲や年齢によって注意点が違うと知ったうえで、今の基準を一つずつ確認していくことなのだと思っています。

ACTION|今日からできる小さな一歩

今日からできる、3つの小さな一歩

すべてを一度に覚え直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。

一歩①

家にある保冷剤やタオル、清潔な布の置き場所を、一度確認してみる

一歩②

この記事の「参考にした情報」から、こども家庭庁や日本赤十字社のページを一つだけ開いてみる

一歩③

冷やし方が整理できたら、消防署や日本赤十字社の応急手当講習を調べてみる

まずは今日、ひとつ確認してみるところから。それだけで十分な一歩です。

THINK TOGETHER

とらまるくんと考えてみよう

とらまるくん
とらまるくん
そっか、「とにかく長く冷やせばいい」わけじゃないんだね。範囲によって気をつけることが違うなんて知らなかったよ。今度、講習も受けてみたいな。
ふくぼう先生
ふくぼう先生より

あなたが知っているやけどの対処法は、いつ・どこで習ったものだったでしょうか。

「古い知識を責める」のではなく「今の基準にアップデートする」——そんな視点を、少し心に留めておいてもらえたらうれしいです。

FAQ

やけどの応急手当 よくある質問

やけどをしたとき、一番大切なことは何ですか?

冷やす時間の長さ以上に、やけどをしてから冷やし始めるまでの時間をどれだけ短くできるかが基本とされています。日本赤十字社の資料でも「急いで冷やします」とされており、まずすぐに冷やし始めることが第一歩です。

やけどをしたら、まず何分くらい冷やせばいいですか?

こども家庭庁の資料では、すぐに10分から20分以上冷やすことがすすめられています。日本医師会の解説でも、最低10分は冷やすことが目安として紹介されています。

服を着たままやけどをした場合、脱がしてから冷やすべきですか?

こども家庭庁や日本医師会の資料では、熱いお湯などで服が濡れた場合、無理に脱がさず服の上から冷やすことがすすめられています。

広範囲のやけどでも、長く冷やし続けたほうがいいですか?

日本赤十字社の資料では、広範囲を10分以上冷却するのは避け、特に子どもや高齢者は体温が下がりすぎないよう注意するべきとされています。子どもは大人よりも皮膚が薄く、同じ温度でも深いやけどになりやすいとされているため、範囲や年齢による違いを知っておくと安心です。

やけどの範囲は、どうやって見当をつければいいですか?

MSDマニュアルでは、開いた手のひら全体の広さを「からだの表面積のおよそ1%」とする「手掌法」が、部分的なやけどの範囲を確認する目安として紹介されています。

水ぶくれができた場合や、範囲・程度に迷う場合はどうすればいいですか?

総務省消防庁の資料では、水ぶくれをつぶさずそっと冷やし、病院を受診することがすすめられています。手のひら1枚分以上の範囲、顔・手足の関節部分・陰部のやけど、乳幼児・高齢者である場合も、受診・救急要請を検討する目安として紹介されています。判断に迷ったときや気になるときは、様子を見すぎずに医療機関を受診しましょう。

味噌や油を塗るという方法は、今でも有効ですか?

現在確認できる消防庁・こども家庭庁・日本赤十字社・日本医師会の資料には、その方法は含まれていません。

POINT

この記事のポイント

  • 何よりもまず、やけどをしてから冷やし始めるまでの時間を、どれだけ短くできるかが基本とされている。
  • 範囲が小さいやけどは、蛇口の水を直接強く当てず、10〜20分以上を目安に冷やすことがすすめられている。
  • 服が熱いお湯などで濡れた場合は、無理に脱がさず服の上から冷やすことがすすめられている。
  • 範囲が広いやけどは、体温が下がりすぎるリスクがあるため、10分以上の冷却は避けるべきとされ、特に子どもや高齢者は注意が必要。子どもは皮膚が薄く、同じ温度でも深いやけどになりやすいとされている。
  • やけどの範囲は、開いた手のひら全体を「からだの表面積のおよそ1%」とする「手掌法」で見当をつけられる。
  • 重症の目安は、成人はからだの表面積のおよそ20〜30%以上、乳幼児はおよそ10〜15%以上とされている。
  • 水ぶくれ、顔・手足の関節部分・陰部のやけど、範囲が大きい、乳幼児・高齢者である——いずれかに当てはまるときや気になるときは、様子を見すぎずに医療機関を受診しましょう。
  • 「味噌を塗る」といった方法は、現在確認できる公的な資料には含まれていない。
SUMMARY

まとめ

やけどの手当で何よりも大切なのは、冷やし始めるまでの時間をどれだけ短くできるかです。そのうえで、「とにかく長く冷やせば安心」というものではなく、範囲によって気をつけるポイントが変わってきます。小さな範囲は10〜20分以上を目安に、広い範囲は冷やしすぎによる体温低下に注意しながら対応することがすすめられています。水ぶくれをつぶさないこと、範囲や程度に迷ったときや気になるときは、様子を見すぎずに医療機関を受診することも、あわせて知っておきたいポイントです。

すべてを一度に覚える必要はありません。まずは、この記事で紹介した「参考にした情報」を一つだけ開いてみること。それだけで、十分な一歩になります。


日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。

とらまるくん

とらまる

一緒に学ぶ仲間

白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。

ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。

▶ とらまるのプロフィールはこちら
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ふくぼう先生
ふくぼう先生
元消防士・防災士
安心して暮らせる毎日を日常の習慣から。 元消防士・防災士として長年の現場経験を通じて、さまざまな災害と向き合ってきました その経験から辿り着いた答えは 「日常を整えることが最高の備えになる」 ということでした。 防災を特別なものにせず日常と非常時をつなぐ知恵をお伝えしています。
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