川の近くに住む前に知りたいこと|内水氾濫と外水氾濫の違い
STEP1|土地の設計図
川の近くに住む前に知りたいこと|内水氾濫と外水氾濫の違い
川沿いの遊歩道を歩くのが好きで、休日はつい水辺の見えるカフェを選んでしまう。窓から川面がきらめくのが見える部屋に、憧れたことがある——そんな「水辺の景色が好き」という感覚を持っている方に、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
「川の近くに住む=水害が心配」というイメージを持たれがちですが、実は水害には大きく分けて2つのタイプがあり、川からの距離だけでは測れない部分があります。この記事では、内水氾濫と外水氾濫の違いと、地形や地図から読み取れるポイントを、長年の消防活動の経験をもとに整理していきます。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
「川の近くだから水害が心配」「川から離れているから大丈夫」——どちらの思い込みも、実は半分だけ正解です。この記事の目標は、外水氾濫と内水氾濫という2つの仕組みの違いを知り、自分の暮らす場所にどちらのリスクがあるかを、地図を見ながら判断できる状態になることです。
今日はまず、2つの水害の違いと、地形から読み取れるサインを一緒に確認していきましょう。
この記事でわかること
- 外水氾濫と内水氾濫、それぞれの起きる仕組みと違い
- 川から離れていても内水氾濫が起こりやすい地形・場所のサイン
- 国土交通省「重ねるハザードマップ」で2種類の浸水リスクを確認する方法
- 前兆に気づいたときに、家族でどう動くかの考え方
- 引っ越し先・家探しの段階で確認しておきたいポイント
「川から離れていれば、水害は関係ないの?」
実は、水害には「川があふれる」タイプと「街の排水が追いつかなくなる」タイプの2つがあります。
川から離れているから安心とは言い切れないんです。後者の「内水氾濫」は、大雨で下水道や水路の処理能力を超えたときに、街のどこでも起こり得ます。
どちらのタイプかによって、注意したい場所も変わってきます。まずはこの2つの違いを知ることから始めましょう。
水辺の景色が好きだったら、水の動き方が気になるようになっていた
川沿いを散歩するのが好き。窓から水面が見えるカフェでゆっくり過ごす時間が好き。旅先で川沿いの街並みを歩くのが楽しい——そういう「水辺が好き」という感覚を持っている方は、実は水害のリスクを読む力の入口にもう立っています。
「水害に備えなければ」という入口だと身構えてしまいますが、「この川の水が増えると、どこまで来るんだろう」「この街に降った雨は、どこに流れていくんだろう」という好奇心の入口なら、自然と続けられます。
水の流れに関心を持つ習慣が、そのまま水害のリスクを見る目にもつながっていきます。
「川から遠いから」と「排水が追いつかない」は別の話だった
防災士の研修や地域の防災講話の場では、水害を経験された方の体験談を聞く機会があります。印象的だったのは「川からかなり離れた住宅街なのに、道路が急に冠水した」という声と、「川のすぐそばだったが、堤防のおかげで長年浸水しなかった」という声が、どちらも珍しくないという話でした。
研修の場でよく聞くのは、短時間に強い雨が降ったとき、下水道や水路が処理しきれる量を超えて、街の低い場所やアンダーパスに水が溜まっていったという内容です。川の水位が上がるより先に、足元から水が上がってくる感覚だった、という話を何度も耳にしてきました。
水害と聞くと川の増水をイメージしがちですが、実際には「街に降った雨がさばけなくなる」という、まったく別の仕組みで起こることも少なくありません。
水害への備えは、「川からの距離」だけでなく「自分の街の水の流れ方」を知ることから始まります。
2つの氾濫は、水が来る方向がまったく違う
同じ「水害」と呼ばれていますが、外水氾濫と内水氾濫は水が来る方向も原因もまったく異なります。まずこの違いを知ることが、地図を読む土台になります。
大雨や台風で河川の水位が上昇し、堤防を越える(越水)、あるいは堤防が壊れる(決壊)ことで水があふれる現象です。川沿いの低い土地や、堤防のそばの地域に広がりやすいのが特徴です。
短時間に強い雨が降ったとき、下水道や水路の排水能力を超えて、雨水が地上にあふれる現象です。川の増水がきっかけではなく、その場に降った雨がさばけなくなることで起こるため、川から離れた住宅街や都市部でも発生します。
2つの水害が起きやすい場所には、共通する特徴がある
専門的な調査をしなくても、地図や日頃の散歩の延長で気づけるポイントがあります。次の4つを意識してみてください。
地形図で周辺より標高が低い、すり鉢状にくぼんだ場所は、雨水が集まりやすく内水氾濫のリスクが高くなる傾向があります。
道路の下をくぐる「アンダーパス」、地下街、半地下の駐車場・部屋は、水が一気に流れ込みやすく、内水氾濫の被害が集中しやすい場所として知られています。
街の中を流れる水路や排水路が小さい地域は、大雨の際に排水が追いつきにくくなる傾向があります。普段の散歩で水路の大きさを意識してみるのもよいでしょう。
堤防に守られた川沿いの低い土地は、外水氾濫が起きた場合に浸水が深くなりやすい地形です。堤防の高さと自宅の標高差を意識しておくとよいでしょう。
「重ねるハザードマップ」で2種類の浸水リスクを確認する
外水氾濫のリスクは「洪水浸水想定区域」、内水氾濫のリスクは「内水浸水想定区域」として、国土交通省の「重ねるハザードマップ」に別々のレイヤーで表示されます。自宅の住所を入力し、両方のレイヤーを切り替えて確認してみましょう。
①自宅の位置:洪水(外水)レイヤーと内水レイヤー、それぞれで色が付いていないか確認する。
②内水ハザードマップの整備状況:内水浸水想定区域の指定は自治体によって進み具合が異なります。表示がない場合も「リスクがない」とは限らないため、自治体の下水道担当窓口に確認しておくと安心です。
③よく通る道・地下空間:通学路や駐車場に、アンダーパスや地下空間が含まれていないか確認する。
平成27年の水防法改正で、内水により大きな被害が想定される地域について、内水浸水想定区域を指定する制度が整えられました。地域によって公表状況に差があるため、ハザードマップに表示がない場合は自治体の窓口で確認するのが確実です。
道路が濡れ始めたら、まず低い場所・地下から離れる
外水氾濫・内水氾濫のどちらであっても、水が来てからでは身動きが取りにくくなります。次のようなサインが見られたときは、早めに低い場所や地下空間から離れることを優先してください。
- 短時間に強い雨が降り続いている
- 側溝や排水路の水位が急に上がる、あふれ始める
- マンホールから水が噴き出す、または逆流する
- 道路の低い場所から冠水が始まる
- 河川の水位情報で急激な上昇が見られる
地下街・地下駐車場・アンダーパスにいる場合は、浸水が始まる前に地上へ移動することが基本です。道路が数十cm冠水すると、車の運転や徒歩移動が急に危険になります。自治体からの避難情報が出ている場合は、その指示に沿って早めに行動してください。
「内水氾濫」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、「川から離れているかどうか」ではなく「雨水がどこに流れていくか」で考えると、ぐっとイメージしやすくなります。
散歩中に見かけた側溝の大きさ、通学路にあるアンダーパス、地図で見つけた周囲より低い土地——「ここ、雨が降ったらどうなるんだろう」と気になったときが、いちばん学びやすいタイミングです。
気になったときに地図を開いてみる。それだけの積み重ねで、水の流れを読む力は自然と育っていきます。
まず1つだけ、今日確認する
すべてを一度に確認する必要はありません。今日できることを1つだけ選んでみてください。
「重ねるハザードマップ」で自宅・通学路の住所を検索し、洪水(外水)レイヤーと内水レイヤーの両方を確認する
いつもの通学路やよく通る道に、アンダーパスや周囲より低い場所がないか意識しながら歩いてみる
家族で「道路が冠水し始めたら、地下や低い場所からすぐ離れる」を1つだけ決めておく
「全部を一度に確認する」と思うと動けなくなります。まずはスマホでハザードマップを開くところからです。
とらまるくんと考えてみよう
「水害に備えなければ」と身構えるより、「この街の水は、どこに流れていくんだろう」という好奇心のほうが、ずっと長続きします。
川沿いの散歩を楽しむ気持ち、水辺のカフェで過ごす時間、旅先で見た川沿いの景色——好きなことを積み重ねていたら、気づけば水の流れを読む力が育っていた。そういう暮らしの設計が、私の理想です。まずは今日、ハザードマップを開くところから。
内水氾濫・外水氾濫 よくある質問
内水氾濫と外水氾濫、ハザードマップではどちらを見ればいいですか?
両方確認することをおすすめします。国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、外水氾濫は「洪水浸水想定区域」、内水氾濫は「内水浸水想定区域」として別のレイヤーで表示されます。地域によっては内水版の整備が進んでいない場合もあるため、表示がない場合は自治体の窓口に確認すると確実です。
川から離れたマンションの高層階に住んでいても、内水氾濫は関係ありますか?
建物自体が低い土地やアンダーパスの近くにある場合は、地下駐車場や1階部分の浸水、周辺道路の冠水による影響が考えられます。高層階の居室そのものへの直接的な影響は小さくなる傾向がありますが、まずは建物の立地を確認しておくことが基本です。
道路が冠水し始めたら、車で移動しても大丈夫ですか?
道路の冠水は数十cmでもエンジン停止やハンドル操作の不具合につながることがあります。冠水が始まっている道路への進入は避け、可能であれば徒歩で安全な場所へ移動することをおすすめします。
引っ越し先を決める前に、どちらの水害リスクを重視すればいいですか?
「川から近いか」だけでなく「周囲より低い土地かどうか」「アンダーパスや地下空間が近くにないか」もあわせて確認すると、外水・内水どちらのリスクも把握しやすくなります。地理院地図の陰影段彩図で周辺の高低差を見てみるのも参考になります。
この記事のポイント
- 水害には「外水氾濫(川があふれる)」と「内水氾濫(街の排水が追いつかない)」の2タイプがあり、仕組みが異なる。
- 内水氾濫は川からの距離に関係なく、周囲より低い土地・アンダーパス・地下空間で起こりやすい。
- 国土交通省「重ねるハザードマップ」では、外水と内水が別レイヤーで表示される。内水版の整備状況は自治体によって差があるため、表示がなければ窓口で確認する。
- 前兆に気づいたら、地下や低い場所からまず離れる。
- 水の流れを読む力は、散歩や地図を眺める日常の延長で自然と育てられる。
まとめ
川沿いの景色が好きで、つい水辺のカフェを選んでしまう。地図で川の流れを眺めているうちに、いつの間にか時間が経っている。そういう「水辺が好き」という感覚が、そのまま水害のリスクを見る目にもつながっていく——それがこの記事の目指したかたちです。
水害への備えは、川からの距離だけで測れるものではありません。外水氾濫と内水氾濫、2つの仕組みの違いに気づけるようになれば、それだけで見える景色が変わります。あとはハザードマップで答え合わせをするだけです。
今日、まずスマホでハザードマップを開いてみてください。洪水(外水)と内水、両方のレイヤーを見比べてみることが、水を知ることの入口になります。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
あわせて読んでおくと、理解がさらに深まります。
いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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