高台に住んでいても油断できない理由|斜面と地滑りのこと
STEP1|土地の設計図
高台に住んでいても油断できない理由|斜面と地滑りのこと
高台からの眺めが好きで、家を選ぶときも「浸水しない場所」を条件に探した——そんな方に、もう一つだけ知っておいてほしいことがあります。
「高台=水害の心配がない」というのは、多くの場合その通りです。ただ、高台には水害とは別の「斜面・地滑り」という視点があり、しかも高台の中には自然の地形ではなく、人の手で造成された土地も含まれています。この記事では、高台特有の地形リスクと、確認しておきたいポイントを、長年の消防活動の経験をもとに整理していきます。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
「高台だから水害は安心」——その判断は間違っていません。この記事の目標は、そこに「斜面・地滑り」というもう一つの視点を加え、自分の住む高台が自然の地形なのか、造成された土地なのかを、地図を見ながら確認できる状態になることです。
今日はまず、高台の中にある2つのタイプと、確認できるポイントを一緒に見ていきましょう。
この記事でわかること
- 「自然の高台」と「盛土で造られた高台」の違い
- 大規模盛土造成地マップで、自宅が造成地かどうかを確認する方法
- 高台特有のチェックポイントである「擁壁」の状態の見方
- 前兆に気づいたときに、家族でどう動くかの考え方
- 引っ越し先・家探しの段階で、高台のどこを確認しておくべきか
「高台に住んでいれば、もう安心なんだよね?」
水害の心配が少ないというのは、その通りだと思います。ただ、高台には「斜面・地滑り」というもう一つの視点があります。
実は高台の中にも、自然にできた土地と、谷や斜面を埋めて人の手で造られた土地があるんです。見た目では区別がつきにくいのが難しいところです。
今日は、その見分け方と確認できるポイントを一緒に見ていきましょう。
高台からの眺めが好きで選んだ土地に、もう一つ知っておきたい視点がある
見晴らしがよくて、風通しも気持ちいい。夕方には街並みが一望できる——そんな理由で高台の土地や家を選んだ方は多いと思います。水害のハザードマップが真っ白だったことも、決め手の一つだったかもしれません。
「土砂災害に備えなければ」という入口だと身構えてしまいますが、「この高台って、もとからこの高さだったのかな」「造成される前は、どんな地形だったんだろう」という好奇心の入口なら、自然と続けられます。
高台の景色を楽しむ気持ちの延長で、その土地の成り立ちに関心を持つことが、そのままリスクを見る目にもつながっていきます。
「高台だから安心」と思っていた土地が、実は谷を埋めた造成地だった
自身の防災講話での質疑応答や、研修に参加した際に、高台に住む方から「水害は気にしていなかったけれど、まさか自分の家の周りが盛土だったとは知らなかった」という声を、まれに聞くことがありました。
そのときに印象に残っているのが、「昔このあたりは谷だったらしい」「造成した年代が古く、擁壁にひびが入っているのが気になっていた」という話です。高台に引っ越してきた方の中には、その土地がもともとどんな地形だったのかを知らないまま暮らしているケースもある、ということをそのとき感じました。
高台であること自体は、水害の観点からは前向きな条件です。ただ、その高台がどうやってできたのかという成り立ちまで含めて知っておくことが、もう一段階安心につながると感じています。
高台への安心は、水害の視点だけでなく、土地の成り立ちを知ることでさらに確かなものになります。
「自然の高台」と「盛土で造られた高台」がある
高台と一口に言っても、成り立ちは大きく2つに分かれます。まずこの違いを知ることが、地形を読む土台になります。
台地や丘陵など、長い年月をかけて自然にできた高台です。地盤が比較的安定していることが多いとされていますが、それでも急な斜面の縁(へり)の部分は、がけ崩れなどのリスクが残ります。
谷や斜面に土を盛って平らにした「谷埋め型」、もとの斜面に土を継ぎ足して造成した「腹付け型」など、宅地開発の際に人の手で高さを作った土地です。見た目は自然の高台と変わらないため、造成の経緯を知らずに暮らしているケースも少なくありません。
自宅が盛土造成地かどうかは、地図で確認できる
自宅の土地が盛土造成地に該当するかどうかは、国土交通省および各自治体が公表している「大規模盛土造成地マップ」で確認できます。谷を埋めた面積が3,000平方メートル以上(谷埋め型)、または傾斜20度以上・高さ5メートル以上の盛土(腹付け型)が対象として示されています。
①自宅の位置:大規模盛土造成地マップに自宅が該当していないか確認する。マップは重ねるハザードマップからも確認できます。
②マップに表示がない場合:マップは主に「大規模」な盛土を対象としているため、それより小規模な造成地は表示されないことがあります。造成年代が古い地域は、自治体の窓口で確認しておくと安心です。
③マップの位置づけ:マップに該当することは「直ちに危険」を意味するものではなく、「安全性を確認しておきたい土地」として示されたものです。過度に不安にならず、確認の入口として活用してください。
擁壁は、年数とともに劣化していく
高台や造成地に特有のチェックポイントが「擁壁(土地の高さを支えるコンクリートや石積みの壁)」です。擁壁は経年劣化するものであり、古い造成地ほど点検の視点を持っておきたい部分です。
- 表面にひびが入っている、一部が崩れている
- 壁面が膨らんでいる、傾いているように見える
- 壁の水抜き穴から水が出ていない、または常に水がにじんでいる
- 擁壁の上や下の地面に亀裂がある
自治体によっては、一定の高さ・角度を超える崖に近い土地の建築について、独自の条例(通称:がけ条例)で制限を設けている場合があります。内容は自治体ごとに異なるため、高台の崖沿いに家がある場合は、自治体の建築担当窓口で確認しておくと安心です。
「いつもと違う」に気づいたら、まず離れる
土砂災害は、水害と比べて前兆が少なく、突然発生することもあると言われています。それでも、次のようなサインに気づいたときは、斜面や擁壁から離れることを優先してください。詳しい前兆現象や動き方は、STEP1「土砂災害から家族を守るために、まず地形を知ることから始める」でも解説しています。
- 擁壁や斜面に新しいひびが入る、壁が膨らんで見える
- 斜面から小石がパラパラと落ちてくる
- 普段と違う音(ゴー・ミシミシ)がする
- 地面や壁に亀裂が入る、家が傾く感覚がある
崖・擁壁・斜面から離れる方向へ、水平に移動することが基本です。自治体からの避難情報が出ている場合は、その指示に沿って早めに行動してください。
「高台だから安心」という感覚は、水害の視点では間違っていません。ただ、「この高さは、どうやってできたんだろう」という視点を一つ加えるだけで、見える景色が少し変わります。
散歩中に見かけた擁壁のひび、造成年代の古そうな住宅地、地図で見つけた谷筋の跡——「ここ、もとはどんな地形だったんだろう」と気になったときが、いちばん学びやすいタイミングです。
気になったときに地図を開いてみる。それだけの積み重ねで、高台の土地を読む力は自然と育っていきます。
まず1つだけ、今日確認する
すべてを一度に確認する必要はありません。今日できることを1つだけ選んでみてください。
「大規模盛土造成地マップ」で自宅の住所を検索し、該当していないか確認する
散歩のついでに、自宅や近所の擁壁にひび・膨らみがないか眺めてみる
家族で「擁壁や斜面に異変を感じたら、すぐ離れて集まる場所」を1つだけ決めておく
「全部を一度に確認する」と思うと動けなくなります。まずはスマホでマップを開くところからです。
とらまるくんと考えてみよう
高台の景色が好き、風通しのいい家が好き——その感覚のままで大丈夫です。そこに「この土地はどうやってできたんだろう」という視点を少し加えるだけで、暮らしはもっと安心なものになります。
高台を選んだ理由を大切にしながら、その土地の成り立ちにも関心を持つ。そういう暮らしの設計が、私の理想です。まずは今日、マップを開くところから。
高台と地形リスク よくある質問
自宅が盛土造成地かどうかは、どこで確認できますか?
国土交通省や自治体が公表している「大規模盛土造成地マップ」で確認できます。重ねるハザードマップからも参照できることがあります。ただし小規模な造成地は表示対象外のことがあるため、マップに表示がない場合でも、造成年代が古い地域は自治体の窓口で確認しておくと確実です。
大規模盛土造成地マップに該当していたら、その土地はもう住めないのですか?
いいえ、該当すること自体が「危険」を意味するものではありません。マップは大規模地震時に安全性を確認しておきたい土地を示したもので、確認・点検のきっかけとして活用するものです。過度に不安にならず、まずは状況を知ることから始めてみてください。
擁壁のひびを見つけたら、どうすればいいですか?
ひびの大きさや状況によって対応は異なりますが、気になる場合は自治体の窓口や専門業者に相談することをおすすめします。応急的には、大きな亀裂や膨らみが見られる場合、その擁壁の近くでの生活動線を見直すことも一つの考え方です。
高台に引っ越す前に、地形をどう確認すればいいですか?
候補地の住所を大規模盛土造成地マップや重ねるハザードマップで確認するのに加えて、地理院地図の陰影段彩図で周辺の高低差を見てみると、谷筋や急斜面が視覚的に分かりやすくなります。古い地形図や航空写真と見比べると、造成前がどんな地形だったかのヒントが得られることもあります。
この記事のポイント
- 高台には「自然にできた高台」と「盛土で造られた高台」の2種類があり、見た目では区別がつきにくい。
- 盛土造成地かどうかは、国土交通省・自治体の「大規模盛土造成地マップ」で確認できる。
- 高台特有のチェックポイントとして、擁壁のひび・膨らみなどの状態も確認しておきたい。
- マップに該当しても「直ちに危険」ではない。確認・点検のきっかけとして活用する。
- 前兆に気づいたら、擁壁や斜面からまず離れる。
まとめ
高台からの景色が好きで、風通しの良さも決め手になった。水害のハザードマップが真っ白だったことも、安心材料の一つだった——そういう「高台を選んだ理由」を大切にしながら、もう一つの視点を加えることが、この記事の目指したかたちです。
高台であることは、水害の視点からは前向きな条件です。ただ、その高台がどうやってできた土地なのかを知ることで、安心はさらに確かなものになります。あとは大規模盛土造成地マップで答え合わせをするだけです。
今日、まずスマホでマップを開いてみてください。自宅の高台がどんな成り立ちなのかを知ることが、土地を知ることの入口になります。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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