古い家に住む家族へ伝えてほしいこと|地震の時、身を守る順番がある
STEP2|家の設計図
古い家に住む家族へ伝えてほしいこと|地震の時、身を守る順番がある
「デルタゾーン」という言葉を、ご存じですか? 地震で建物が倒壊した時、頑丈な家具や構造物のそばに生まれる三角形の隙間のことです。救助現場では、この隙間に生存者がいることを知って探索します。
ただし、これは最後の手段です。まず知ってほしいのは、「古い家では、揺れが来たら真っ先に外へ出ること」。そしてその次に取るべき行動の順番があります。
この記事は、田舎に住むおじいちゃん・おばあちゃんなど、旧耐震基準の家に住む家族へ伝えてほしいことをまとめました。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事の目的は、「デルタゾーンを覚えること」ではありません。
古い家に住む家族が「地震の時に何を、どの順番でするか」をあらかじめ知っておくこと。そして、その知識を離れて暮らす家族が届けることが、この記事の本当の目的です。
この記事でわかること
- 「旧耐震基準」の家とは何か、なぜリスクが高いのか
- 古い家での地震時に身を守る「4つの行動の優先順位」
- デルタゾーンとは何か、救助現場でどう使われているか
- デルタゾーンを使う時の注意点(固定されていない家具・ガラスの危険)
- 家族に伝える時の言い方のヒント
「デルタゾーンって、どういうもの?」
デルタゾーンは、救助の現場で大切にしている考え方です。でも、まず知ってほしいのは「古い家では、揺れが来たらまず外へ」ということ。
デルタゾーンは最後の手段です。「外へ出る → 家具の下で守る → デルタゾーン」という順番があることを、おじいちゃんに伝えてあげてください。
「デルタゾーンを知っている」だけでは、足りない
SNSや動画で「地震の時はデルタゾーンを使え」という情報が広まることがあります。それ自体は間違いではありません。でも、順番を知らずに使うと、逆に危険になることがあります。
デルタゾーンは、建物が倒壊した際に生まれる「三角形の生存空間」のことです。救助現場では、この隙間に生存者がいることを前提に探索します。つまり本来は救助する側の知識ですが、「救助される可能性がある人」が知ることにも意味があります。
ただし、大前提があります。古い家(旧耐震基準)に住んでいるなら、緊急地震速報が鳴った瞬間から、家の外へ出ることが最優先です。
デルタゾーンは「外へ出られなかった時」の、最後の手段として知っておく知識です。この順番を家族に伝えることが、この記事の目的です。
講習でデルタゾーンを伝えた時、「初めて聞いた」という顔ばかりだった
地域の方々への救助訓練や防災講習の場で、デルタゾーンの話をする機会がありました。建物が倒壊した時に生き残る可能性を高めるための考え方として、救助する側が持つ知識を「救助される側にも知ってほしい」という思いで伝えてきました。
参加者のほとんどが「デルタゾーンという言葉を初めて聞いた」という反応でした。そして、「固定されていない家具のそばは危ない」「ガラスの近くも危険」という注意点を伝えると、「じゃあどこにいればいいの?」という質問が次々と出てきました。
その中で特に印象的だったのは、「田舎の親に伝えたい」という声が多かったことです。「自分は新しいマンションに住んでいるけど、実家が古い家で心配だった」という方が、講習のあとに「親に電話する」と言って帰っていかれた。
知識は、使われてこそ意味があります。この記事を読んだ方が、その日のうちに家族に伝えてくれることを願っています。
「旧耐震基準」の家とは? なぜリスクが高いのか
1981年(昭和56年)6月以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」で建てられています。旧耐震基準は「震度5強程度の地震で倒壊しない」ことを想定した基準です。
それ以降の「新耐震基準」は「震度6強〜7程度の地震で倒壊しない」ことを想定しています。大きな地震への耐性に、明確な差があります。
- 登記簿や建築確認済証に記載された「建築確認日」を確認する
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けていれば旧耐震基準の可能性が高い
- 不明な場合は市区町村の建築指導課に相談する方法もある
田舎の実家・親族の家・昔から住んでいる家は、旧耐震基準であるケースが少なくありません。「昔から建っている家=古い基準で建てられた可能性がある」と認識しておくことが、最初の一歩です。
地震の時、古い家での「身を守る順番」
デルタゾーンは「最後の手段」です。まず、取るべき行動の優先順位を整理します。
緊急地震速報が鳴ったら、迷わず家の外へ出る
旧耐震基準の家では、大きな揺れで倒壊するリスクがあります。揺れが来る前に外へ出ることが、最も安全な選択です。玄関・勝手口・窓など、一番近い出口から迷わず出てください。外に出たら、建物から離れた場所へ移動します。
固定された頑丈な家具の下・横で身を守る
外へ出る余裕がなければ、あらかじめ固定しておいた頑丈な机やテーブルの下に潜り、頭と体を守ります。ポイントは「固定されている」こと。固定されていない家具は揺れで倒れ、かえって危険になります。また、家具の「前」ではなく「横」に位置することで、倒れてきた時の直撃を避けやすくなります。
デルタゾーンに身を潜める
机の下に潜り込む余裕もない緊急事態では、頑丈な壁・構造物・大型家具のそばに身を寄せます。建物が倒壊した際、そのそばに三角形の隙間(デルタゾーン)が生まれやすく、生存空間になります。ただし、後述する「注意点」を必ず確認してください。
家具の固定が、すべての前提になる
②も③も、「家具があらかじめ固定されているか」が判断の分かれ目になります。固定されていない家具のそばは、揺れで倒れてきた時に最も危険な場所になります。家具の固定は、日常の中でできる最初の備えです。
「デルタゾーン」とは何か
デルタゾーンは、建物や天井が崩落した際に、頑丈な家具や構造物(柱・壁など)のそばに生まれる三角形の空間です。その形が三角形(デルタ)に似ていることから「デルタゾーン」と呼ばれます。
建物が完全に倒壊しても、この空間に入り込んでいれば生存できる可能性があります。救助現場では、倒壊建物のデルタゾーンを優先的に探索します。
- 固定されていない家具のそばは危険。揺れで家具そのものが倒れ、押しつぶされるリスクがあります。
- ガラスの近くは危険。窓ガラス・食器棚のガラスは割れて飛散します。
- 「デルタゾーン=どこでも安全」ではありません。頑丈で固定された構造物・家具のそばに限ります。
「田舎の家族」に伝える時のヒント
大切な家族が旧耐震基準の家に住んでいる場合、この知識を伝えることが一番の備えになります。ただし、「危ないよ」という言い方では、相手が不安になるだけで行動にはつながりにくいものです。
「大きな揺れが来たら、まず外へ出て」と繰り返す。玄関から一番近い出口を一緒に確認する。
「家具は固定してね」とお願いし、できれば一緒に作業する。固定されていない家具は助けにならないことを伝える。
「外に出られなかった時は、頑丈な机の下で頭を守って」と伝える。デルタゾーンは最後の手段として補足する。
「お盆に帰った時に一緒に確認しよう」「電話した時に聞いてみよう」という形で、日常の会話の中に取り入れると伝えやすくなります。怖い話としてではなく、「一緒に考えよう」というトーンで伝えることが大切です。
「家具の横には倒れてこない」というのは、意外と知られていないポイントです。家具は基本的に「前か後ろ」に倒れます。横から倒れてくることは少ない。だから、机の下に潜る時も「机の横側」に体を寄せると、万が一机が動いた時にも対応しやすくなります。
また、旧耐震基準の家でも、耐震診断・耐震補強を行うことでリスクを大幅に下げられます。費用の一部を自治体が補助するケースが多くあります。「家を直すのは大変」と思わずに、まず市区町村の窓口に相談してみることをおすすめします。
今日、家族に「外へ出て」と伝える
すべてを一度に解決しなくて大丈夫です。今日できることは、旧耐震基準の家に住む家族に「大きな揺れが来たら、まず外へ」と伝えること。たったそれだけで、行動が変わります。
- ①緊急地震速報が鳴ったら → まず外へ出る
- ②外へ出られなければ → 固定した頑丈な家具の下・横で身を守る
- ③どうしても潜れなければ → 頑丈な構造物のそばに身を寄せる(デルタゾーン)
- 大前提:家具はあらかじめ固定しておく。ガラスのそばには近づかない。
「外へ出る」を最優先として家族が共有できていれば、パニックの中でも判断がしやすくなります。
とらまるくんと考えてみよう
あなたの家族の中に、古い家に住んでいる方はいますか?
「まず外へ出て」という一言を伝えるだけで、いざという時の行動が変わります。この記事を、今日のうちに家族に送ってみてください。
デルタゾーン・古い家の地震対策 よくある質問
旧耐震基準の家は、必ず倒壊するのですか?
必ずしもそうではありません。旧耐震基準でも、地盤の状況・建物の状態・地震の規模によって被害の大きさは異なります。ただし、阪神・淡路大震災や能登半島地震などのデータでは、旧耐震基準の建物の被害が新耐震基準に比べて著しく多かったことが確認されています。「絶対に安全」とは言えない前提で、できる備えを進めることが大切です。
デルタゾーンはどこにできやすいですか?
頑丈な柱や壁の角、大きくて重い家具(固定されたもの)のそばにできやすいとされています。ただし、「ここに必ずできる」と事前に断言することはできません。あくまで「倒壊後に救助側が優先して探索する場所」として知っておく知識です。固定されていない家具のそばやガラスの近くには近づかないことが重要です。
家具の固定は、賃貸でもできますか?
賃貸住宅でもできる方法があります。突っ張り棒タイプの転倒防止グッズや、耐震マット(貼り付けタイプ)は原状回復しやすく、賃貸でも使いやすい選択肢です。また、壁に穴を開けない粘着タイプの固定器具も各種販売されています。家具の種類や設置場所に合わせて選ぶことができます。
旧耐震の家の耐震補強は、費用がかかりすぎませんか?
耐震補強の費用は建物の状態や規模によって異なりますが、多くの自治体が「耐震診断の無料化」や「耐震改修工事への補助金制度」を設けています。まず市区町村の窓口や住宅支援窓口に問い合わせることで、費用負担を大幅に減らせるケースがあります。「費用が心配だから動けない」という方にも、まず相談だけしてみることをおすすめします。
この記事のポイント
- 1981年(昭和56年)以前に建てられた「旧耐震基準」の家は、大きな地震への耐性が低い。まず自分の家・家族の家が該当するか確認する。
- 古い家での地震時の優先順位は「①外へ出る → ②固定された家具の下で守る → ③デルタゾーンに身を潜める」の順番。
- デルタゾーンは最後の手段。固定されていない家具のそばやガラスの近くは危険。
- 家具の「前」ではなく「横」に位置することで、倒れてきた時の直撃を避けやすくなる。
- この知識を、離れて暮らす家族に伝えることが最初の一歩。帰省・電話のタイミングで話してみる。
まとめ
デルタゾーンという言葉は、救助する側が持つ知識です。でも「救助される可能性がある人」、つまり旧耐震基準の家に住んでいる家族が知っておくことにも、大きな意味があります。
ただし、それは「最後の手段」です。まず外へ出ること。出られなければ固定された家具の下で守ること。デルタゾーンはその次の、さらに次の話です。
「田舎のおじいちゃん・おばあちゃんに伝えたい」——そう思ったら、今日のうちに連絡してみてください。「大きな揺れが来たら、まず外へ出て」。その一言が、いざという時の行動を変えます。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
あわせて読んでおくと、理解がさらに深まります。
いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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