ハザードマップの「水の高さ」を、わが家のドアに置き換えてみる
STEP1|土地の設計図
ハザードマップの「水の高さ」を、わが家のドアに置き換えてみる
ハザードマップに書かれた「浸水深0.5m」という数字。その意味は、あなたの家の玄関ドアが開かなくなるかもしれないという現実です。
被害の大きさを知ることも大切ですが、私が特に伝えたいのは「逃げたくても逃げられない」という状況のことです。
水の高さがドアの外で30〜40cmに達すると、水圧で玄関ドアが開かなくなります。数字が「自分ごと」に変わる瞬間、ハザードマップの見え方が変わります。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事の目的は、「浸水深の数字を覚えること」ではありません。
ハザードマップを開いて、「うちの地域は水の高さが○cmまで来ることがある」と知り、そのとき自分と家族はどう動けるかを考えること。数字が「自分の暮らし」に重なった瞬間、備えが動き始めます。
この記事でわかること
- 「浸水深」という言葉の意味と、ハザードマップの色が表していること
- 水の高さ別に、暮らしと避難への影響がどう変わるか
- 水の高さが30〜40cmでドアが開かなくなるという事実と、その理由
- 「早めに動く」ことが唯一の答えになる理由
- ハザードマップで「わが家の色」を確認する方法
「ハザードマップの数字、どう読めばいいの?」
「浸水深」というのは、地面から水面までの高さのことです。「水の高さ」と言い換えるとわかりやすいと思います。
0.5mは大人の膝くらい。でも私が特に伝えたいのは、水の高さが30〜40cmになると、玄関ドアが水圧で開かなくなるということなんです。被害を知るより先に、「そこにいたら逃げられなくなる」ことを意識してほしくて。
「数字を見ても、ピンとこない」は自然なこと
ハザードマップを開いてみたものの、「浸水深0.5〜1.0m」という数字が何を意味するかピンとこない——そういう方は、実はとても多いです。
数字と色を見て「なんとなく危なそうだな」と感じても、それが自分の暮らしと結びつかなければ、行動にはなかなかつながりません。
私が防災の話をする中でいつも強調してきたのは、「水の高さ」をわが家のドアや体の高さに置き換えてみることです。
その瞬間、多くの方が「そういうことか」と表情が変わります。被害の大きさより、「そこにいたら逃げられなくなる」という現実が、行動を変えるからです。
「ドアが開かなくなる」と聞いた瞬間、表情が変わった
地域の方々に水害の話をするとき、ハザードマップを手元に持ってもらい、「この色の地域は、水の高さがどのくらいになるか知っていますか?」と聞くようにしていました。
多くの方が「なんとなく危ない」とは思っていても、具体的なイメージは持っていません。そこで私がいつも伝えていたのが、ドアの話です。
「水の高さが30〜40cmになると、玄関ドアが水圧で開かなくなります。50cmを超えると、大人が足を踏み出すことも難しくなる。逃げたいと思っても、逃げられなくなるんです」
この話をすると、さっきまでハザードマップをぼんやり見ていた方が、急に真剣な顔になります。「じゃあうちは早く出ないといけないってこと?」と、自分ごととして考え始める。
被害の大きさを伝えるより、「その時に何ができなくなるか」を伝える方が、ずっと早く行動につながる。そのことを、何度も経験から学んできました。
「浸水深」=水の高さ。ハザードマップの色が表すもの
浸水深とは、地面から水面までの高さのことです。「水が何センチまで来るか」を指す言葉です。
洪水ハザードマップでは、この浸水深をもとに地図が色分けされています。色が濃いほど水の高さが高くなることを意味します。
国土交通省の基準では、ハザードマップの浸水深は主に以下の区分で色分けされています(自治体によって色分けが異なる場合があります)。
| 浸水深(水の高さ) | 体感・暮らしへの影響 |
|---|---|
| 〜0.5m未満 膝下くらいまで |
床下浸水の可能性。水の中を歩くのは難しくなってくる。 |
| 0.5〜1.0m 膝〜腰のあたり |
床上浸水。大人でも歩行・避難が困難になる高さ。 |
| 1.0〜2.0m 1階の軒下まで |
1階全体が水没する高さ。在宅での垂直避難が選択肢になる。 |
| 2.0〜5.0m 2階の軒下まで |
2階まで水が迫る。建物の構造によっては深刻な被害になる。 |
| 5.0m以上 2階の屋根以上 |
建物ごと浸かる高さ。命を守るための早期避難が不可欠。 |
※出典:国土交通省 川の防災情報をもとに作成。実際の浸水深区分はお住まいの市区町村のハザードマップをご確認ください。
水の高さが30〜40cmで、玄関ドアが開かなくなる
被害の規模を知ることは大切です。しかし私が特に伝えてきたのは、「逃げたい時に逃げられなくなる」という状況のことです。
玄関ドアの外に水が溜まると、水圧がドアにかかります。外開きのドアであれば、水がドアを押さえる方向に力がはたらくため、内側から開けようとしてもドアが重くなります。
膝下
膝あたり
膝〜腰
※数値は水難学会・国土交通省資料・複数の実験データをもとにした目安です。ドアの形状・材質・設置状況によって異なります。
「内側に同じ高さまで水が来ていれば開く場合もある」——でも、そこまで待っていたら足元はすでに水の中です。「逃げよう」と思った時にはもう遅い状況になりえます。
「ハザードマップに0.5mと書いてあった」という情報は、「その高さになる前に、外へ出ておかなければならない」という情報です。
ドアが開いても、「歩けない」という現実
仮にドアが開いたとしても、もうひとつの壁があります。水の中を歩くことの難しさです。
- 水深が膝(約50cm)に達すると、ほとんどの人が歩行・避難困難になるとされています(関川水害の調査)
- 大人の男性で約70cm、女性で約50cmが避難困難の目安とされています(伊勢湾台風のアンケート)
- 流速がある水(氾濫流)では、膝の高さでも大人が転倒するほどの力がかかります
「膝くらいなら歩けそう」という感覚は、静止した水の中ではある程度あてはまります。しかし、氾濫した水は流れています。流速があると、膝の高さでも人は流される可能性があります。
ドアが開かなくなる・歩けなくなる——この2つが重なるのが、水の高さ40〜50cm前後です。「水害は早めに動く」という言葉の意味は、この現実から来ています。
「わが家の色」をハザードマップで確認する3ステップ
頭で理解するより、実際に地図を開いて確かめることが何倍も大切です。難しくはありません。3ステップで確認できます。
スマホやPCで「重ねるハザードマップ(disaportal.gsi.go.jp)」を開く
「洪水」を選択し、自宅の住所を入力して地図を表示する
わが家周辺の色を確認し、凡例で「水の高さ」を読み取る
- その水の高さになる前に、自分と家族は外へ出られるか
- 浸水が始まったら、垂直避難(2階以上へ)は可能か
- 避難のタイミング(避難指示が出る前に動く必要があるか)
色を確認したあと、「うちは早く出ないと間に合わないね」と家族で話す。それだけで、いざという時の動きが変わります。
「ハザードマップに色がついていない=安全」ではありません。浸水想定区域の指定は河川ごとに行われており、近くの小さな川や排水路は対象外のことがあります。また、区域外でも大雨による内水氾濫(排水が追いつかずに水がたまる現象)は起こりえます。
ハザードマップは「ここが危ない」を知るための地図であると同時に、「色がないから大丈夫」と過信しないための地図でもあります。自治体のハザードマップをまず確認し、疑問があれば市区町村の窓口に問い合わせてみてください。
まず「わが家の色」を調べて、家族に伝える
すべてを一度に把握しなくて大丈夫です。今日できることは、ハザードマップを開いて、わが家の「色(浸水深)」を確認すること。そして、その色が「どのくらいの水の高さか」を家族に伝えること。
「うちのハザードマップを確認したら、水の高さが最大○cmになることがあるって書いてあった。ドアが開かなくなる前に、早めに動かないといけないんだって」
その一言が、「大雨の時にどうするか」を家族で話すきっかけになります。避難のタイミングをあらかじめ決めておくことが、いざという時の迷いをなくします。
とらまるくんと考えてみよう
あなたのお住まいのハザードマップ、開いてみたことはありますか?
「浸水深○m」という色を確認したら、それをわが家のドアや体の高さに置き換えてみてください。その瞬間、「いつ動くか」が自然と見えてきます。
浸水深・ハザードマップ よくある質問
ハザードマップに色がついていない場所は安全ですか?
必ずしも安全とは言えません。ハザードマップの浸水想定は対象河川ごとに作成されており、近くの小規模な川や排水路が対象外になっていることがあります。また、大雨による内水氾濫(雨水が排水しきれずに地表に溢れる現象)は、浸水想定区域外でも起こりえます。「色がないから大丈夫」ではなく、「色がついていない理由を確認する」姿勢が大切です。
ハザードマップの浸水深は「必ずそうなる」ということですか?
いいえ、あくまで「想定される最大の高さ」です。実際の浸水深は降雨量・地形・排水状況などによって変わります。ただし、「想定最大規模」は近年の豪雨でたびたび超えることがわかってきています。「最大でこのくらいになりうる」という情報として捉え、最悪の場合を想定して行動を考えることが大切です。
内開きのドアは水圧で開かなくなりますか?
内開きドアの場合、水圧がドアを「開く方向」に押すため、外開きドアより開きやすい側面があります。ただし、ドアを開けた瞬間に大量の水が室内に流れ込むため、脱出後も状況が悪化することがあります。また、ドアの内外の水位差が大きいほど力が必要になる点は共通です。国土交通省の資料では、内開き扉の場合は約47cmで開けられなくなるとする試算があります(健常者を想定した条件)。
「垂直避難」とはどういう意味ですか?
垂直避難とは、外へ避難することが難しい状況で、自宅や建物の2階以上へ移動して身の安全を確保することです。水害時には、外に出る前にドアが開かなくなったり、道路が冠水していたりすることがあります。そのような状況では、無理に外へ出ようとせず、建物の上階に移動することが命を守る選択になる場合があります。ただし、浸水深が高い地域では建物ごと水没するリスクもあるため、できる限り早めの段階で外への避難を行うことが理想です。
この記事のポイント
- 「浸水深」とは地面から水面までの高さ(水の高さ)のこと。ハザードマップの色がそれを表している。
- 水の高さが30〜40cmに達すると外開きの玄関ドアが水圧で開かなくなる。「逃げたい時に逃げられない」状況は現実に起こりえる。
- 水深が膝(約50cm)を超えると歩行・避難が困難になる。ドアが開かない・歩けないが重なるのがこの高さ。
- ハザードマップは「被害を知る地図」でもあり、「いつ動くかを決める地図」でもある。
- まずわが家の「色」を確認し、「早めに動く必要があるか」を家族で話しておくことが最初の一歩。
まとめ
「浸水深0.5m」という数字が、「玄関ドアが開かなくなるかもしれない高さ」と重なった瞬間、ハザードマップの読み方が変わります。
被害の大きさより、「その状況になったら何ができなくなるか」を知ることが、早めに動くための動機になります。水害は、逃げるタイミングが命に直結します。ハザードマップが「いつ動くかを決める地図」になった時、それは本当の意味で使えるツールになります。
わが家の色を確認して、家族に一言伝える。そこから始めてください。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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