STEP1 土地を知る

避難経路は1本じゃ足りない。家族で確認したい「もう1本の道」

住宅街の分かれ道と地図を前に避難経路を2通り確認するイメージ
のりまつ

STEP1|土地の設計図

避難経路は1本じゃ足りない。家族で確認したい「もう1本の道」

POSITION

本質の防災4STEP

この記事は、本質の防災4STEPの「STEP1|土地を知る」の記事です。

「いざとなれば、いつもの道で逃げればいい」——そう思っている方が、実はとても多いのが現実です。

でも「いつもの道」が、災害の時に通れる保証はどこにもありません。浸水・倒壊・渋滞・崩落——その日に何が起きているかは、誰にも事前にはわかりません。

だからこそ、「もう1本の道」を、何もない今日のうちに決めておくことが大切です。それだけで、いざという時の迷いがなくなります。

30 SEC SUMMARY

30秒でわかるまとめ

避難経路は「1本決めれば安心」ではありません。災害の種類や状況によって、いつもの道が通れなくなることがあります。
「もう1本の道」を決めておくだけで、いざという時の迷いがなくなります。地図アプリを開いて確認するのは5分でできます。
子どもと一緒に通学路を歩きながら「ここ、どう思う?」と聞いてみることが、家族の避難経路を育てる最初の一歩です。
GOAL

このページが目指すこと

この記事の目的は、「避難経路の正解を覚えること」ではありません。

「いつもの道が通れなかったら、どこを歩くか」を家族で話し合うきっかけをつくること。そして、子どもの何気ない一言が、実は最高の気づきになることを知ってもらうことです。

FOR YOU

この記事でわかること

  • 「避難経路は1本」では足りない理由
  • 消防活動の現場から見えた「複数ルート」の考え方
  • 「もう1本の道」を決めるための3つの視点
  • 子どもの気づきが最高のハザードマップになる理由
  • 今日から家族でできる、避難経路の育て方
QUESTION

「逃げる道って、1本でいいんじゃないの?」

とらまるくん
とらまるくん
ねえふくぼう先生、避難経路って「ここから逃げる」って1本決めておけばよくない? わざわざ2本も考えなくていい気がするんだけど……。
ふくぼう先生
ふくぼう先生

その感覚、すごく自然なんですよ。でも「いつもの道」が、その日に通れるかどうかは誰にもわかりません。

消防の現場では、出動する前から複数のルートを頭に入れておくことが当たり前でした。なぜそうするのか——その理由が、家族の避難経路を考える上でもそのまま使えるんです。

INTRODUCTION

「逃げる道は決めてある」が、落とし穴になることがある

避難経路を「1本決めてある」という家庭は、意外に多いものです。近くの公園、学校の方向、大きな通り——それ自体は良いことです。

でも、その道が「使えない状況」になった時、次の行動はスムーズに取れるでしょうか。

道路が浸水していたら。倒木や電柱が塞いでいたら。渋滞で人も車も動けなくなっていたら。

その場で「どうしよう」と考え始めると、判断に時間がかかります。時間がかかることが、リスクになることがあります。

「もう1本の道」を知っておくことは、「備えを増やす」というより「迷いをなくす」ことです。パニックになりそうな時でも、体が自然に動くための準備です。

STORY

「最短ルートが使えない」——現場で学んだ、複数ルートの意味

長年の消防活動の中で、出動の際に「ルートを複数持っておくこと」が当たり前の習慣でした。

現場へ向かう時、最短経路だけを決めていれば十分かというと、そうではありません。道路工事による通行止め、事故による渋滞、水害時の冠水——現場に向かおうとした道が、その瞬間に使えなくなっていることがあります。

道路工事や車両通行規制が行われる際には、あらかじめ消防署にも届け出が入る仕組みがあります。これにより、出動前の段階で「この道は使えない」という情報を把握した上で、代替ルートを選定することができます。つまり、プロの現場では「1本の道に頼らない」ことが、動きの速さそのものにつながっているのです。

この考え方は、家族の避難経路にもそのまま置き換えられます。

地震や台風のような突発的な状況では、すべての情報を事前に把握することはできません。ただし、「この道は水害の時に水が溜まりやすい」「この交差点は混雑しやすい」という傾向は、ハザードマップや日常の観察から予測することができます。

「ここは危なそうだから、こっちの道も視野に入れておこう」——その一言を家族で共有しておくだけで、いざという時の体の動き方が変わります。

ANSWER|なぜ1本では足りないか

「いつもの道」が使えなくなる3つの理由

避難経路が1本しかない時のリスクは、主に3つあります。

理由① 災害の種類で「通れる道」が変わる

地震と水害では、危険な場所がまったく違います。地震で安全な広い道が、川沿いであれば水害時には浸水リスクがあります。1本の道が「どの災害にも対応している」とは限りません。

理由② 同じ道でも「時間帯・天候」で状況が変わる

昼間は問題なく歩ける道でも、夜間は街灯がなく視界が悪くなることがあります。雨の日に水が溜まりやすい場所、風が強い日にブロック塀が倒れやすい道——日常から気になっている場所が、非常時には最初に問題になります。

理由③ 「その場で考える」と判断が遅くなる

緊急時は、頭よりも体が先に動くことが大切です。「どこへ行こうか」と考える時間が、安全を遠ざけることがあります。「ここが駄目なら、こっち」という判断を、事前に決めておくことが「迷いをなくす」ことに直結します。

COMMON MISTAKE|よくある誤解

「広い道・大きな通りなら安全」は半分だけ正しい

「幹線道路に出れば安心」という考え方は、よくあります。広い道は見通しがよく、人も集まりやすい。確かに一面では正しいのですが、大きな道には別のリスクがあります。

渋滞・混雑によって歩行者も車も動けなくなること、電柱や看板が倒れた時に影響範囲が広いこと、川沿いの幹線道路は水害時に真っ先に浸水するケースがあること——こういった特性は、地域ごとに異なります。

「大きな道だから安全」ではなく「自分の地域では、この道がどういう特性を持っているか」を知ることが大切です。そのためにハザードマップを開き、日常の観察を活かすことが、最も確かな方法だと感じています。

CHECK POINT|もう1本の道を決める視点

「もう1本の道」を選ぶ3つの視点

完璧な避難経路は存在しません。でも「この視点で考えてみる」という軸を持つだけで、候補が見えてきます。

視点① 水とブロック塀を避ける

水が溜まりやすい低地・川沿い・アンダーパスは水害時に通行不能になりやすい。高いブロック塀が続く道は地震時に崩れるリスクがあります。

視点② 夜でも歩ける道を選ぶ

街灯が多い・見通しが良い・人通りが見込める道を選ぶと、夜間や悪天候でも安心感が高まります。昼間に確認した道が、夜は別の景色になることも意識しておくと良いでしょう。

視点③ 「逃げ込める場所」を確認する

コンビニ・公共施設・近所で顔見知りの家——道中に「困ったら入れる場所」を1か所でも意識しておくと、一時的な避難先として機能することがあります。

ハザードマップで確認する方法
  • 「(市区町村名) ハザードマップ」で検索し、浸水想定区域・土砂災害警戒区域を開く
  • 自宅から避難場所までのルートを地図上でなぞり、「赤い色(危険)」がかかっていないか確認する
  • 危険が重なる場所を回避した「もう1本のルート」を書き込む、または写真を撮っておく
HOW TO USE|子どもと一緒に育てる避難経路

子どもの「ここ、なんか変」が最高のハザードマップになる

避難経路を考える時、大人は地図やハザードマップを開きます。でも実は、毎日その道を歩いている子どもの観察眼が、大人では気づきにくいことを教えてくれることがあります。

「この道、車が多くて怖い」「このトンネル、昼間でも暗い」「ここのおばちゃん、いつも挨拶してくれる」「雨の日にここ、水たまりがすごくなる」——子どもが何気なく話すこういった言葉は、実はとても貴重な情報です。

「車が多い」は渋滞・危険箇所のサイン。「昼間でも暗い」は夜間の通行リスク。「よく挨拶してくれるおばちゃん」は、いざとなれば助けを求められる場所。「雨の日に水たまり・濁った水が流れる」は浸水しやすい低地や、土砂崩れの予兆になることもある——子どもの言葉には、地図には載っていない生きた情報が詰まっています。

「ここ、どう思う?」と聞くだけで十分です。子どもが自分の言葉で地域の道を語る時間そのものが、自然に避難経路を育てる時間になっています。これはフェーズフリーな備えの、もっとも自然な形のひとつだと感じています。

子どもに聞いてみる3つの質問
  • 「通学路で、なんか気になる場所ってある?」
  • 「雨の日、どこが歩きにくい?」
  • 「困ったら入れそうなお店や家、どこかにある?」
ふくぼう先生
FIELD MEMO ふくぼう先生メモ

子どもと一緒に歩いていると、「濁った水がここによく流れてくる」と教えてくれたことがありました。その場所は、雨が続いた後に実際に水が集まりやすいエリアでした。

濁った水が流れるということは、泥が混じっているということ。それは土が崩れやすい状態にある可能性を示すことがあります。大人が地図で確認するより先に、毎日その道を歩いている子どもが、体でその場所の特性を知っていたのです。

子どもの「ここ、なんか変」という感覚を笑わずに聞くこと。その一言を家族の会話に乗せること。それが、地図には載らないリアルなハザードマップを育てることになると感じています。

ACTION|今日からできる小さな一歩

「もう1本」を決めるのに、特別な準備はいらない

避難経路を完璧に整える必要はありません。今日できることは、「いつもの道が使えなかったら、どこを通るか」を家族で1回話し合うことだけです。

方法①

ハザードマップを開いて、今決めている避難経路に浸水・土砂のリスクがないか確認する

方法②

子どもと一緒に通学路を歩いて「気になる場所」を聞いてみる。地図に書き込むか、写真を撮っておく

方法③

「ここが通れなかったら、こっちの道で行こう」と家族で1本だけ共有する。それがもう1本の道になる

「もう1本の道」は、完璧でなくていい。「あの道が駄目なら、こっち」と家族全員が知っているだけで、いざという時の判断が変わります。

THINK TOGETHER

とらまるくんと考えてみよう

とらまるくん
とらまるくん
なるほど!「もう1本の道」って、備えを増やすんじゃなくて、迷いをなくすためのものだったんだね。しかも子どもの「ここなんか変」って言葉が、地図より正確なこともあるなんて。ぼくも歩きながらちゃんと見てみよう!
ふくぼう先生
ふくぼう先生より

あなたの家族が決めている避難経路、「もう1本」はありますか?

今日、お子さんと一緒に道を歩いて「ここ、どう思う?」と聞いてみてください。その会話の中に、家族だけが知っている大切な気づきが、きっとあります。

FAQ

避難経路 よくある質問

避難経路は何本くらい決めておけばいいですか?

まずは「いつもの道」に加えて「もう1本」の計2本を把握しておくことを目標にすると考えやすいです。3本以上になると家族全員が覚えにくくなるため、「1本目が使えなかったらこっち」という判断がスムーズにできる2本が現実的です。完璧なルートでなくても、「なんとなくこっちへ向かう」という方向感覚を家族で共有しておくだけで、いざという時の迷いが大きく減ります。

避難経路は歩いて確認した方がいいですか?

できれば一度歩いてみることをおすすめします。地図上では問題なく見えても、実際に歩くと「ここは段差が多い」「夜は暗くて不安」「ブロック塀がずっと続いている」という気づきが出てきます。特に子どもや高齢の方がいる家庭では、実際に歩いた感覚が避難時の判断に直結します。休日の散歩がてら歩いてみると、自然に確認できます。

水害と地震で、避難経路を別々に考える必要がありますか?

災害の種類によって危険な場所が変わるため、別々に考えることが理想的です。水害時には低地・川沿い・アンダーパスを避けた高台方向へのルートが基本になります。地震時にはブロック塀が多い道・倒壊リスクのある建物が密集した道を避けることが大切です。まずは「水害の時」と「地震の時」で1本ずつ考えてみると、整理しやすくなります。

子どもが一人で避難する可能性がある場合、どう考えておけばいいですか?

子どもが一人の時に使うルートは、「知っている大人がいる場所を通るルート」を意識すると安心感が高まります。顔見知りのお店・いつも挨拶してくれる近所の方の家・学校・公民館など、困ったら声をかけられる場所が途中にあるルートを、子どもと一緒に確認しておくことが大切です。合言葉や集合場所を決めておくことも、家族計画の一部として有効です。

POINT

この記事のポイント

  • 「いつもの道」は、災害の時に通れるとは限らない。浸水・倒壊・混雑で使えなくなることがある。
  • 「もう1本の道」は備えを増やすためではなく、迷いをなくすためにある。
  • ハザードマップを開いて、避難経路に浸水・土砂リスクがないかを確認することが最初のステップ。
  • 子どもの「ここ、なんか変」という一言が、地図には載らないリアルな情報になる。
  • 「ここが駄目ならこっち」と家族で1本だけ共有することが、いざという時の安心の根拠になる。
SUMMARY

まとめ

「避難経路は決めてある」という安心が、「1本しかない」という盲点につながることがあります。

プロの現場でも、道が使えなくなる状況は起きます。だからこそ、事前に複数のルートを把握しておくことが、動きの速さに直結します。これは家族の避難経路でも、考え方はまったく同じです。

「もう1本の道」を決めるのに、特別な知識はいりません。子どもと一緒に歩いて「ここ、どう思う?」と話し合うだけで始まります。その会話が、地図には載らない、あなたの家族だけのハザードマップを育てていきます。


日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。

とらまるくん

とらまる

一緒に学ぶ仲間

白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。

ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。

▶ とらまるのプロフィールはこちら
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あわせて読んでおくと、理解がさらに深まります。

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とらまるくん
とらまるくん
「子どもに聞いたら、こんな気づきがあったよ!」「もう1本の道、決めてみた!」——ぜひふくぼう先生に教えてね🐯
ふくぼう先生
ふくぼう先生
気になったこと、ぜひ教えてください。あなたの声が、次の記事のヒントになります。
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PROFILE
ふくぼう先生
ふくぼう先生
元消防士・防災士
安心して暮らせる毎日を日常の習慣から。 元消防士・防災士として長年の現場経験を通じて、さまざまな災害と向き合ってきました その経験から辿り着いた答えは 「日常を整えることが最高の備えになる」 ということでした。 防災を特別なものにせず日常と非常時をつなぐ知恵をお伝えしています。
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