いざという時に動ける人と動けない人の差|家族を守る「決断力」の育て方
STEP4|行動の設計図
とっさの判断力は、普段の習慣からしか生まれない。
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この記事は、本質の防災4STEPの「STEP4|行動を決める」の入口となる記事です。
「いざとなれば動ける」と思っていても、実際には体が動かない。そんな場面が、緊急時には起きます。
東日本大震災に緊急消防援助隊として現地に入った元消防士として、現場で感じたことがあります。助かった人と逃げ遅れた人の差は「知識」ではありませんでした。「事前に決めていたかどうか」でした。
特別な訓練は必要ありません。家族と「こうなったらこうする」を話し合うだけで、いざという時の行動は大きく変わります。
30秒でわかるまとめ
この記事でわかること
- 助かった人と逃げ遅れた人の行動の違い
- 「津波てんでんこ」が伝える避難の本質
- 受け身の避難行動がなぜ危険なのか
- 能動的な行動を生む「事前の決断」の作り方
- あらゆる災害に共通する行動の考え方
ふくぼう先生の現場メモ
東日本大震災の発災後、緊急消防援助隊として現地へ向かいました。発災から約24時間かけて現場に到着しました。
現場で見たこと、生き残った方から聞いた話の中で、ひとつのことが繰り返し出てきました。
逃げ遅れた方の多くは、「アナウンスが流れてから逃げようとした」「家族を探しに戻った」「まさか自分のところまで来るとは思わなかった」という状況だったということです。
一方で助かった方の多くは、地震の揺れを感じた瞬間に、迷わず高台へ向かっていました。
情報を待っていた人ではなく、自分で判断して動いた人が助かっていた。現場で見てきたことが、そのことを強く示していました。
「津波てんでんこ」が伝えること
東北地方には、古くから伝わる言葉があります。
「津波てんでんこ」
津波が来たら、家族のことも顧みず、てんでんばらばらに各自で高台へ逃げろという意味です。一見冷たく聞こえるかもしれません。しかしこの言葉には、深い知恵が込められています。
家族を探しに戻る。誰かを待つ。その行動が、逃げる時間を奪います。それぞれが迷わず逃げることが、結果として家族全員が助かる確率を高めるのです。
三陸沿岸は過去に何度も津波の被害を受けてきた地域です。その経験の中から生まれた言葉が「津波てんでんこ」です。先人たちの犠牲と教訓が、この短い言葉に凝縮されています。東日本大震災でも、この教えを知っていた地域では避難率が高かったとされています。
一見すると冷たく聞こえるこの言葉には、実は4つの深い意味が込められています。
- 自分の命は自分で守る:誰かの助けを待つことで逃げ遅れることを防ぐ。自助の原則です。
- 逃げる背中が周囲を促す:自分が率先して逃げることで、周囲の人々の避難行動を後押しします。
- 家族間での事前の了解を作る:「いざとなれば各自逃げる」という了解を普段から家族で共有しておく。これにより、家族を探して戻る二次被害を防ぎます。
- 生存者の自責感を和らげる:万が一家族と離れて生き残ってしまった人が「自分だけ逃げてしまった」と自分を責める苦しみを、少しでも和らげるための教えでもあります。
東日本大震災の際、岩手県釜石市の小中学生は「津波てんでんこ」の教えを日頃から学んでいたことで、先生の指示を待たずに各自の判断で高台へ走り、互いに助け合いながら避難しました。このエピソードは「釜石の奇跡」として広く知られています。知識と事前の決断が、子どもたちの命を守りました。
受け身の避難がなぜ危険なのか
「アナウンスが流れたら逃げよう」と考えている方は多いと思います。ただ、津波は地震発生から数分〜数十分で到達することがあります。アナウンスを待つ時間はない場合があるのです。
受け身の行動パターン
アナウンスが流れるまで待つ
家族を探してから逃げようとする
「まだ大丈夫」と様子を見る
荷物を取りに戻る
能動的な行動パターン
揺れを感じた瞬間に高台へ向かう
家族とは現地で合流すると決めておく
迷わず逃げることを最優先にする
荷物より命を優先する
人は危険な状況でも「自分は大丈夫」「まだそこまでではない」と考えてしまう心理的な傾向があります。これを正常性バイアスといいます。過去に大きな被害を経験していない人ほど、この傾向が強く出ることがあります。だからこそ、感情や状況に関係なく動ける「事前の決断」が重要です。
これは津波だけの話ではない
自分で判断して動く力は、津波に限った話ではありません。地震・台風・火災。どんな災害でも、事前に行動を決めている人ほど落ち着いて動けます。
- 情報を待つより、危険を察知して動く
- 「こうなったらこう動く」を事前に決めておく
- 正しい知識を持つことで、適切な判断ができる
- 臨機応変に動くためには、基本の行動を体に染み込ませておく
災害はさまざまな形で現れます。だからこそ、特定の状況だけでなく「能動的に考えて動く」という姿勢そのものを身につけることが大切です。
事前に決めておくべきこと
緊急時に体が動くかどうかは、普段の準備で決まります。難しいことは不要です。家族で「こうなったらこうする」を一度話し合うだけで、いざという時の行動は大きく変わります。
- 地震の揺れが収まったら、まずどこへ向かうか
- 津波の危険がある地域なら、どのルートで高台へ逃げるか
- 家族がバラバラの時は、どこで合流するか
- 子どもだけの時はどう動くか
- 「逃げる」判断はどの段階でするか
災害時は頭が混乱しやすい状況です。事前に決めておくことで、混乱の中でも体が自然に動きます。「迷う」という時間を減らすことが、命を守る時間を増やすことに直結します。
よくある質問
Q. 家族を置いて逃げるのは正しいのですか?
「津波てんでんこ」の教えは、各自が迷わず逃げることで、結果として全員が助かる確率を高めるという考え方です。家族を探して戻る行動が、逃げる時間を奪い、両方が危険になることがあります。家族がそれぞれどこへ逃げるかを事前に決めておくことが、最善の備えになります。
Q. アナウンスが流れてから逃げるのでは遅いですか?
津波は地震発生から数分で到達することもあります。アナウンスを待つ時間がない場合もあります。大きな揺れを感じたら、アナウンスを待たずに高台へ向かうことが基本です。「強い揺れ=津波の可能性あり」と体に刷り込んでおくことが大切です。
Q. 高齢者や体の不自由な方はどうすればいいですか?
要配慮者への支援は、地域の避難支援体制と事前の個別計画が重要です。自治体の避難行動要支援者名簿への登録、近隣との連携、福祉避難所の場所の確認などを事前に行っておくことをおすすめします。
Q. 子どもに避難行動を教えるにはどうすればいいですか?
難しい説明より「地震が来たら高いところへ逃げる」というシンプルなルールを繰り返し伝えることが効果的です。避難場所への経路を実際に歩いて確認することも大切です。子どもが自分で判断して動けることが、いざという時の命綱になります。
この記事のポイント
- 助かった人の多くは、アナウンスを待たず自分で判断して動いていた
- 「津波てんでんこ」は、各自が迷わず逃げることで全員を守る先人の知恵
- 受け身の避難行動が命取りになることがある
- 正常性バイアスを超えるには「事前の決断」が最も有効
- 能動的に動く姿勢は、あらゆる災害に共通する生存の原則
まとめ
土地を知り、家を知り、暮らしを整えた先にあるのが、行動を決めることです。
どれだけ備えを整えても、いざという時に動けなければ意味がありません。逆に言えば、事前に「こうなったらこう動く」を決めておくだけで、混乱の中でも体は動きます。
情報を待つのではなく、自分で察知して動く。この一点が、生死を分けることがあります。今日、家族と一緒に「こうなったらどうする」を話してみてください。それが4STEPの最後の、そして最も大切な備えです。
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