「腫れていないから、まだ大丈夫」——その判断、少し危ういかもしれません
いざというときの行動知識
「腫れていないから、まだ大丈夫」——その判断、少し危ういかもしれません
いざというときの行動知識
この記事は、本質の防災4STEPの「STEP4|行動を決める」で心構えを整えたあと、実際の応急手当の基本を扱う記事です。応急手当の基本、やけどの手当、胸骨圧迫に続く、いざというときの行動知識ゾーンの4本目として、骨折・捻挫の見分け方と応急処置の基本を、大人と子どもそれぞれの視点から確認していただけます。
「腫れていないから、まだ大丈夫」——その判断が、あとで悔やまれることもあるかもしれません。
骨折と捻挫は、実は見た目だけでは区別がつかないといわれています。今日は、大人と子どもそれぞれの見分け方の基本と、応急処置の考え方を確認していきましょう。
30秒でわかるまとめ
このページが目指すこと
この記事は、骨折や捻挫をご自身で診断できるようになるためのものではありません。「見た目だけで判断せず、迷ったときにどう動けばいいか」という基本的な考え方を、具体的な情報とともに知っておくことが目標です。実際の固定方法や搬送の判断は、ぜひ公的機関の救命講習で体験してみてください。
まずは、今実際にどう見分け、どう対応するとされているのかを、確認していきましょう。
この記事でわかること
- 大人の場合、捻挫と骨折をどう見分ければいいか
- 子どもの骨折で、大人と違うサインが出る理由(若木骨折・成長軟骨)
- 応急処置の基本(保護・安静・冷却・圧迫・挙上)と、固定の考え方
- 動かしていいか迷ったときの、基本の判断方針
- 救急要請・受診を考えたほうがいいサイン
- 「様子を見れば大丈夫」という考え方が、今も根強く残る理由
「くじいたときって、腫れてなかったら平気なの?」
実は、見た目だけでは捻挫か骨折か判断できないといわれています。
特に子どもは、腫れがすぐに出てこないこともあるんです。まずは、その具体的な見分け方から見ていきましょう。
「たいしたことなさそう」——その判断、迷ったことはありませんか
子どもが転んで足首を痛がっている。でも腫れていないし、少し休めば動けている——そんなとき、「大丈夫そう」と判断してしまうことは、珍しくないと感じています。
ただ、捻挫と骨折は見た目だけで区別することが難しく、特に子どもの骨折は、大人とは違うサインが出ることがあるといわれています。大人の感覚だけで様子を見てしまうと、見誤ってしまうことがあります。
大人と子ども、それぞれの見分け方の基本を、この記事で一緒に確認していきます。
大人には当たり前でも、子どもは基準が違う
長年の消防活動の中で、捻挫や骨折そのものをきっかけに119番通報を受けることは、実はそれほど多くありませんでした。
その一方で、地域の方向けの応急手当講習では、捻挫や骨折の見分け方・手当の仕方について話をする機会が何度もありました。
講習を重ねる中で感じてきたのは、子どもと大人とでは骨の性質そのものが違うため、見分け方や注意点にはっきりとした違いがあるということでした。大人の感覚だけで「たいしたことない」と判断してしまうと、子どもの場合は見誤ってしまうことがある——そのことを、講習のたびに伝えるようにしてきました。
ここから、大人と子ども、それぞれの見分け方の基本を確認し、最後に、こうした誤解がなぜ根強く残るのかにも軽く触れていきます。
1つ目|「痛み・腫れ・変形・動かしにくさ」が目安に
日本整形外科学会によると、骨折では患部に痛みと腫れが生じ、重症の場合は変形したり動かせなくなったりするとされています。一方で捻挫も同じように腫れと痛みを伴うため、見た目だけでは捻挫なのか骨折なのかをはっきり判断することはできないといわれています(日本医師会)。
- 強い痛みがあり、押すと特に痛む
- 腫れや内出血がある
- 見た目が明らかに曲がっている・変形している
- 手足に力が入らない、体重をかけられない
こうした基準は、大人にはそのまま当てはまります。ただし、子どもの場合は少し事情が違います。
2つ目|「若木骨折」は、腫れが遅れて出ることもある
子どもの骨は大人よりやわらかく、完全に折れずに曲がる「若木骨折」と呼ばれる折れ方をすることがあるといわれています。弾力性のある子どもの骨に特有の折れ方とされ、受傷直後は大人ほど強く腫れず、翌日以降に腫れが目立ってくることもあるとされています。「腫れていないから大丈夫」と判断してしまうと、見誤ってしまう可能性があります。
また、子どもの骨の先端には、骨が伸びるための「成長軟骨(成長板)」という、大人にはない軟らかい部分があります。MSDマニュアルによると、この周辺は特に痛みが出やすく、大人には起こらない子ども特有の損傷だとされています。
- 関節そのものより、骨の先端に近い部分をピンポイントで痛がる
- おもちゃを持たせても片手しか使わない、抱っこで腕をかばう
- 歩くのを嫌がる、片足に体重をかけられない
- 受傷直後は腫れていなくても、翌日以降に腫れてくることがある
子どもは痛みをうまく言葉にできないことも多いため、様子の変化そのものが見分けの手がかりになります。「痛い」と言わないから大丈夫、とは限りません。
3つ目|RICE(保護を加えてPRICE)と、固定の考え方
捻挫・骨折いずれの場合も、応急処置の基本は安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)、いわゆるRICE処置だとされています(公益財団法人スポーツ安全協会)。近年では、これに保護(Protection)を加えたPRICE処置という考え方も広がっているとされ、亀田メディカルセンターの解説によると、安静だけでは損傷した組織を保護しきれないことから、副木などによる保護が重視されるようになったといわれています。
固定については、変形していても無理にまっすぐ戻そうとせず、その状態のまま副木で固定することが基本とされています(日本赤十字社)。副木は専用のものでなくても、雑誌や傘、物差しなど身近なもので代用できるとされ、特に子どもは腕や脚が細いため、こうした代用品でも十分だといわれています(日本医師会・東京消防庁)。
迷ったときの基本方針は、「動かしていいかどうか判断に迷ったら、動かさずに固定する」ことだとされています。骨が皮膚から出ている場合や、強い変形・出血を伴う場合はためらわずに救急要請を検討し、そうでない場合も、腫れが引かない・痛みが強い・手足を動かせないといった様子があれば、早めに整形外科を受診することがすすめられています(こども家庭庁・日本医師会)。
- 骨が皮膚から出ている、強い出血がある
- 明らかに変形している
- 手足にまったく力が入らない、体重をかけられない
- 翌日になっても痛みが引かない、腫れが強くなってきた
4つ目|一度信じた情報は、否定されても残りやすい
「腫れていなければ大丈夫」「湿布を貼っておけば様子を見られる」といった考え方は、根強く残りやすいといわれています。心理学者のStephan Lewandowsky氏らが2012年にまとめた分析(Psychological Science in the Public Interest誌)では、一度信じた情報は、後から誤りだとわかっても訂正されにくく、記憶に残り続ける傾向があるとされています。
昔ながらの言い伝えほど記憶に残りやすく、新しい情報に更新されにくいという性質も影響していると考えられます。だからこそ、「様子を見る」ではなく「まず保護して、迷ったら動かさない」という基本を、あらためて知っておくことが役立つはずです。
古い知識を持っていたこと自体を気にする必要はありません。大切なのは、「様子を見る」を「まず保護して、迷ったら動かさない」にアップデートすることです。
この記事で参考にした情報
本文中で紹介した内容は、以下の公的機関・研究にもとづいています。最新の内容は、各リンク先で随時更新されています。
- 日本整形外科学会骨折|症状・病気をしらべる 記事を見る ›
- 日本整形外科学会捻挫|症状・病気をしらべる 記事を見る ›
- 日本赤十字社骨折|講習の内容について 記事を見る ›
- 日本医師会白クマ先生の子ども診療所|ねんざ 記事を見る ›
- 日本医師会白クマ先生の子ども診療所|こどもの骨折 記事を見る ›
- こども家庭庁もしもの時の「応急手当方法」 記事を見る ›
- 東京消防庁電子学習室|命を救う~外傷の応急手当~ 記事を見る ›
- MSDマニュアル家庭版成長板骨折 記事を見る ›
- 公益財団法人スポーツ安全協会RICE処置とは?応急手当ての基本を学ぼう 記事を見る ›
- 亀田メディカルセンター怪我後の早期管理について~RICEからPOLICEへ~ 記事を見る ›
- 学術研究(参考)Lewandowsky et al. (2012) Misinformation and Its Correction 論文を見る ›
実際の固定の仕方や搬送の判断は、消防署や日本赤十字社の救命講習・かかりつけの医療機関でも確認しておくと安心です。
「捻挫か骨折か」を自分たちだけで正確に見分けることは、専門家でも難しい場合があると感じています。大切なのは無理に判断しようとせず、まず動かさずに保護すること。そして、迷ったら早めに医療機関に相談することだと考えています。
子どもの場合は特に、大人の感覚だけで「大丈夫そう」と決めつけないようにしたいですね。
今日からできる、3つの小さな一歩
すべてを一度に覚え直す必要はありません。まずは1つだけ試してみてください。
家にある雑誌・傘・物差しなど、副木の代わりになりそうなものを一度確認しておく
保冷剤や氷のうの置き場所を、家族で共有しておく
かかりつけの整形外科や、休日・夜間に受診できる先を事前に調べておく
まずは今日、ひとつ確認してみるところから。それだけで十分な一歩です。
とらまるくんと考えてみよう
そうなんです。特に子どもは、大人と違うサインが出ることがあります。「たぶん大丈夫」ではなく、「念のため、動かさず見てもらう」という選び方をしてみませんか。
骨折・ねんざ よくある質問
捻挫と骨折、自分で見分けることはできますか?
見た目だけで確実に見分けることは難しいといわれています。痛みの強さや腫れ、動かせるかどうかなどを目安にしつつ、迷った場合は医療機関を受診することがすすめられています。
冷やすときは、どのくらいの時間が目安ですか?
部位によって異なるとされていますが、太もものような大きな筋肉では20分程度が目安とされる一方、指など皮膚が薄い部位は凍傷のリスクがあるため、短時間にとどめることがすすめられています(公益財団法人スポーツ安全協会)。
変形しているように見えるとき、まっすぐに戻してもいいですか?
無理に戻そうとしないことがすすめられています。そのままの状態で副木を使って固定し、医療機関を受診することが基本とされています(日本赤十字社)。
子どもは腫れていなくても病院に行ったほうがいいですか?
若木骨折のように、受傷直後は腫れがはっきりしないこともあるとされています。痛がる場所を触るのを嫌がる、手足を使いたがらないといった様子が見られる場合は、腫れの有無にかかわらず受診を検討することがすすめられています。
副木は専用のものを用意しておく必要がありますか?
専用品でなくても、雑誌や傘、物差しなど身近なもので代用できるとされています(日本医師会)。特別な準備がなくても対応できると知っておくだけで、いざというときの安心につながります。
この記事のポイント
- 捻挫と骨折は見た目だけで区別できないとされている。
- 子どもは若木骨折や成長軟骨など、大人と違うサインが出ることがあるとされている。
- 応急処置の基本は保護・安静・冷却・圧迫・挙上とされている。
- 変形は無理に戻さず、そのまま固定することが基本とされている。
- 迷ったときは、動かさず医療機関に相談することがすすめられている。
まとめ
捻挫と骨折は、見た目だけでは区別がつかないといわれています。特に子どもは、若木骨折のように腫れが遅れて出ることもあり、大人の感覚だけで「大丈夫そう」と判断してしまうと、見誤ってしまうことがあります。
大切なのは、無理に自分たちだけで判断しようとせず、まず保護して動かさず、迷ったら医療機関に相談すること。その積み重ねが、いざというときに家族を守る力になっていくのだと感じています。
日常を整えることが、そのまま非常時の安心につながる。
とらまる
一緒に学ぶ仲間
白いしっぽの先がチャームポイントの、好奇心いっぱいのトラの子。わからないことは素直に「どうして?」と聞くのが得意で、みんなの「聞きたいけど聞けない」を代わりに聞いてくれます。
ふくぼう先生からもらった「まなびのスカーフ」が自慢です。
▶ とらまるのプロフィールはこちら ›関連記事
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いただいたご質問は、今後の記事づくりの参考にさせていただきます
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